きみ色に染まる(2/3)
みのりちゃんの耳朶を飾るのは、僅かに紫がかった半透明の青い石がカッティングされただけのシンプルなもの
けれど、逆にそれが彼女の肌の白さをいっそう引き立てていて―――軽く、目眩がした
「‥‥‥‥みのりちゃん、ピアスホール開けたんだ?」
「あ、はい‥‥あの、ジュエリーメーカーのCMのお仕事をするのに、開いていた方がいいって山田さんに言われて‥‥‥」
「そうなんだ?」
自分から質問したのに、今この状況でみのりちゃんの口から俺以外の男の名前が出てきた事が‥‥正直言って気に食わない
(しかも、相手はあの山田さんだし?)
マネージャーとしての手腕は信頼しているけれど、みのりちゃんを間に俺とはずっと微妙な緊張感を持ち続けている相手だから、余計にそう思う
一方、みのりちゃんは耳に触れたままの俺の指が気になるらしく、落ち着きなく視線を彷徨わせている
だが、しばらくすると意を決したように顔を上げた
「あの‥‥どう、ですか?」
「え?」
質問の意図がつかめなくて短く聞き返した俺に、みのりちゃんは顔を真っ赤にして繰り返す
「だからその‥‥‥やっぱり、似合わない‥‥ですか?」
「‥‥‥‥」
似合うか、と聞かない辺りがみのりちゃんらしい
(俺をこんなに夢中にさせておいて‥‥‥もっと自信を持っていいのに)
そしてそれは、俺がどれだけみのりちゃんの事を好きか分かってないって事でもあるから
ムクムクと、俺の中でやっかいな感情が沸き上がる
「夏輝さん?」
俺はその華奢な肩を抱き寄せて、耳元に息がかかるくらいに顔を寄せて囁いた
「すごく似合ってるよ?‥‥‥‥本当に、このまま食べちゃいたいくらい」
「なっ‥‥‥!」
もうこれ以上は無理だってくらいに真っ赤になって口をパクパクさせるみのりちゃんがどうしようもなく可愛くて
声を上げて笑った後、俺はその柔らかな唇に自分のそれをそっと重ねた
ねえみのりちゃん
今夜は帰すつもりないから
―――いいよね?
俺達の頭上には、どこまでも高く、青い空が広がっていた
―END―
⇒あとがき
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