太陽を抱く夜〜Episode1〜(1/2)
ドラマがクランクインしてから2週間
夏輝さんと会えなくてもどかしい私の心中とは裏腹に、撮影は至って順調に進んでいた
「ねえねえ、みのりちゃんは今好きな人っているの?」
「えっ!?」
その日の撮影が終わった後
スタジオのメイクルームで髪をとかしていた私は、危うく手にしていた櫛を落とすところだった
その様子を見て、私の左隣に座っている女優さんが吹き出す
「やだあ、みのりちゃんてば分かりやすすぎるー!」
「な‥‥っ!」
明らかに面白がっている口調に、私の頬が熱くなった
「も、もう‥‥真緋さんてば、からかわないで下さいよ!」
「あはは、ごめんごめ‥‥‥‥ふふっ」
「‥‥‥っ」
私の抗議に一度は笑いをおさめた真緋さんは、けれどすぐに堪えきれなくなって更に本格的に笑い出す
(もう‥‥)
私はあきらめに近いため息をついて、くるりと椅子を回転させた
真緋さんは私と同じ時期にデビューした女優さんで、このドラマにも私の姉役で出演している
私より二つ年上で、女優になる前は売れっ子のグラビアモデルとして活躍していた
同性でも思わず見とれてしまうそのプロポーションと、明るくて気取らない性格が男性より女性に支持されている人だった
そういう人だから、今回初めて共演した私もすぐに打ち解けられたんだけど‥‥‥
だけど、何でなのかな?
「‥‥‥‥‥‥」
今、私の視線の先では真緋さんの、シャンプーのCMにも抜擢されるくらいに綺麗な長い黒髪がサラサラと揺れている
‥‥‥‥彼女の笑い声に合わせて
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