太陽を抱く夜〜Episode1〜(2/2)
「いーじゃない、恋してる女の子は最高に可愛いいのよ?‥‥それで結局相手は誰なの、みのりちゃん?」
「ちょっ‥‥真緋さん!? その、私には特定の相手なんて‥‥」
やっと笑いをおさめた彼女があっけらかんと言った言葉に、ぎょっとした
その瞬間、夏輝さんの笑顔が頭の中に思い浮かんだけれど
JADEのメンバーや、ごく限られた関係者しか知らない二人の関係をまさかここで暴露する訳にもいかない
「あら、違うの?」
「え‥‥」
撮影用のメイクを落として普段のメイクに直していた真緋さんは、マスカラを塗っていた手を止めて私を見る
その視線のまっすぐさに、社交辞令的な否定の言葉を口にしようとしていた私は思わず息を呑んだ
「そ、れは‥‥‥」
「うんうん」
真緋さんはなおも興味津々といった風に身を乗り出して来る
「‥‥秘密です!」
ハッと我に還った私がきっぱり言い切ると、真緋さんは小さな子供みたいに唇を尖らせた
「えー、何で!? いーじゃない、みのりちゃんのケチ!」
「そんなの知りません!」
メイクルームにいるのは私達だけだという気安さも手伝って、私達はそれからしばらく‥‥‥‥まるで学生の頃みたいに騒ぎ続けた
そして、私の抗議もどこ吹く風の真緋さんに、私はせめてもの抵抗で頬を膨らませてみせたのだった
隼人さんにハッキリ言われた後も、結局私の心の中のモヤモヤしたものはなくなってはくれなかった
それでも
いざ撮影が始まってみると、私の役柄が「有名女子大に通うお嬢様」という事もあって、同年代の女の子が多い撮影現場は予想していたよりずっと和やかだった
真緋さんとの賑やかなやり取りの翌日
すっかり肩の力が抜けた私は、ほとんどNGを出す事もなくどんどん撮影をこなしていった
(何だ、結局私の取り越し苦労だったんだ‥‥‥)
苦笑した私は、監督と一緒にたった今撮影したばかりの映像をチェックするのに集中する
だから、この時の私は全然気づいていなかった
「‥‥‥‥‥‥」
スタッフと談笑する私をじっと見つめる『視線』がある事に―――
to be continued‥‥
110318.
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