アナタと過ごす休日は(1/4)
12月になってから数日後。
今、私は冬馬さんが運転する車の助手席に座っている。
久しぶりに二人のオフが重なって、早めの昼食を済ませてからドライブに行こうと街に出たところだった。
「みのり、これから海に行ってみない?」
「う、み‥‥ですか?」
信号待ちで車が停まると、冬馬さんは隣で目を丸くしている私を見て楽しそうに笑う。
「ほら、今年の夏は結局遠出らしい遠出は出来なかったからさ」
‥‥‥‥‥‥それは、そうなんだけど。
まだ腑に落ちない顔をしている私の頭をポンポンと叩くと、冬馬さんは車と人であふれる都内を脱出するべくハンドルを切ったのだった。
そんなやりとりから2時間後、私と冬馬さんは彼の宣言通りに海へとやって来ていた。
海岸近くの駐車場に車を停めて、人気のない砂浜を二人で手を繋いでゆっくり歩く。
冬の海に来たのなんて、もちろん初めての事で。
だけど空気は冷たく澄んでいて気持ちがいいし、日差しもあるから思っていたよりずっと暖かかった。
「ねえ冬馬さん」
「ん―?」
しばらく歩き続けて、波打ち際までやって来て少し立ち止まる。
そして私の右側で、私に歩調を合わせてくれている冬馬さんを見上げた。
「今日、どうして海に来ようと思ったんですか?」
すると冬馬さんは、ちょっとだけ意地悪そうな笑顔を浮かべて繋いでいるのとは逆の手で私の頬に触れる。
「あれ?みのりは別の場所の方がよかった?」
「そ、そんな事ないですよ!‥‥ただ、本当に何でなのかなって思っただけで‥‥」
「へえ、そう?」
「‥‥‥‥‥っ」
いつもみたいにからかわれているだけだって分かってはいるけれど。
まっすぐに私を見つめてくるその視線に、私の頬がじんわり熱くなる。
「みのり?黙ってちゃ分からないよ?」
そんな私の耳元で冬馬さんがささやく。
もちろん、確信犯だ。
「やっ‥‥‥」
分かってはいても、恥ずかしさにこらえきれなくなった私はギュッと目をつぶってうつむいてしまう。
「んー、いい反応」
「冬馬さんっ!」
うつむいたまま口を尖らせる私の体を、冬馬さんが抱き締める。
「悪かったって‥‥ちょっと遊びすぎたよ」
「もう‥‥」
そして私の髪を優しく櫛きながら続ける。
「この近くに俺の知り合いがやってる店があってさ‥‥そこにみのりを連れて来たかったんだよ」
「え?そうなんですか?」
「そーゆーコト」
「っ!?」
思わず顔を上げた私は冬馬さんにキスされていた。
一瞬だけ唇が触れ合う、ごくごく軽いバードキス。
「ごちそうさま」
顔を真っ赤にして口をパクパクさせる私の視線の先で、冬馬さんは心底楽しそうに笑っていた。
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