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上手なキスの仕方を教えて(1/5)

「ちとせは誕生日、どう過ごしたいんや?」


私の誕生日にオフがもらえると分かったのは9月の半ば。


深夜、堅司さんの運転する車で自宅マンションに送ってもらっている時にそう聞かれた私はうーん、と考え込んだ。


(誕生日かあ‥‥この前見た雑誌に載ってたレストランにも行ってみたいけど、あ、映画もいいなあ)


久しぶりに堅司さんと過ごせる、丸一日のオフ。


ましてやそれが自分の誕生日ともなれば、行きたい所やしてみたい事、ずっと欲しかった物だとか‥‥いろんな事が次から次へと思い浮かんでは来たけれど。


だけど、やっぱり。


「‥‥‥‥」


しばらく考えた後、私はゆっくりと口を開いた。









そして当日。


私達は堅司さんの車でとある温泉にやって来ていた。


“堅司さんと二人、人目を気にしないでゆっくりくつろぎたい”


そんな私のリクエストに合わせて堅司さんが選んでくれたのは、パンフレットにも『森の中の一軒宿・大人の隠れ家』と銘打たれている老舗旅館。


この旅館はすべての部屋が独立した離れになっていて、それぞれの部屋専用のかなり本格的な庭園もあるらしい。


「ここはいわゆる『観光地化した温泉』とはちゃうからな‥‥ここまで足を運ぶんは、純粋に温泉を楽しみたい人がほとんどなんやて」


「そうなんですか?」


駐車場に車を停めて玉砂利が敷き詰められた道を歩きながら、堅司さんが私の背中をポンと叩く。


「せやから、もしちとせに気づいた人がおったとしても、そうそう騒がれることはないやろうし‥‥‥」


「?」


不意に黙り込んだ堅司さんの顔を見上げると、彼はフッと真面目な顔になって私の耳元に口を寄せてきた。


「え?け、堅司さ‥‥」


「ちとせ‥‥いつも我慢しとる分、今日は思いっきりイチャイチャしよな?」


「!!!」


その瞬間、私の顔がこれでもかというくらいに真っ赤になる。


そして、それを見た堅司さんの楽しそうな笑い声が秋の高い空に響き渡ったのだった。





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