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上手なキスの仕方を教えて(2/5)



時計の針が午後4時をまわった頃。


私達は、今夜二人が泊まる部屋専用の庭を散策していた。


私も堅司さんも部屋に用意されていた浴衣に上着を羽織っただけという格好だけど、温泉で火照った体にはちょうど良くて。


いつも見ている夕焼けとは比べられないくらいに鮮やかな光景に、私はすっかり夢中になっていた。


「ちとせ?おーい」


「‥‥‥‥」


すると、突然堅司さんに繋いでいた手をグイッと引っ張られた。


「きゃっ‥‥!」


「こりゃ、あんまりボケっとしとると転んでまうで?」


そう言いながら堅司さんは、そのまますっぽりと私の事を腕の中に閉じ込めてしまう。


「ちょっ、堅司さん!」


突然の事に、私の心拍数が一気に跳ね上がった。


私と堅司さんの間にあるのは、それぞれが身に付けている浴衣の生地だけ。


心も、体も‥‥今の私達の間を遮るものはいつもより確実に少なくて。


私のすべてを見透かされてしまう、そんな気がした。


ところが慌てて体を離そうとした私の肩に置いた手に、堅司さんはギュッと力を込める。


「大丈夫やって、ここには俺たちしかおらんのやから‥‥だーれも見てへんよ?」


せやから、もうちょっとだけ‥‥な?


そんな風に耳元で囁かれたら。


私の体から力が抜けたのに気づいた堅司さんが、小さく笑う。


「ちとせ、今めちゃくちゃドキドキしてるで?」


「‥‥誰がそうさせてるんですか」


もうまともに顔なんか見られなくて。


堅司さんの胸に頭を摺り寄せながら、呟いてみたけれど。


「ん〜、誰やろなあ?」


とぼけた物言いと私の髪を梳く指の優しさには、到底叶うはずもなかった。




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