Musician | ナノ


幸せはここにある(1/3)

『運命だと思った』


ずっとトロイメライの作詞を担当してきた俺が、そんな陳腐な言葉しか思い付けなかった。


ちとせ。


それくらい、俺にとってお前との出会いは衝撃的だったんだよ。


ちとせの声が、その存在が。


トロイメライの活動休止以来、無機質なモノクロに染まっていた俺の心を揺り動かした。


俺の目に映るもの。
俺の手に触れるもの‥‥


あらゆるものが、鮮やかな色彩をまとって、俺に新しい世界を与えてくれる。


その世界の中心にいたのは、いつだってちとせだったから。


他に理由なんてない。


ただ、愛しくて。


だから俺は、ちとせの華奢な体をこの腕に抱きしめたんだ。




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