誰にでもスキだらけ

クラスの女子に一際目を引く女子がいる。
幼なじみのひよ里とよく一緒にいる明依ってやつ。
高くてよく通る声はどこにいても聞こえるし、小さいくせに教室でははね回ってるから嫌でも目に付く。オマケに同じ部活のマネージャーだから1日中。
明依は誰にでも人懐っこくて、ひよ里は苦手そうなタイプやと思ったけど案外ウマが合うらしい。
「お前、明依みたいなの苦手やと思ってたワ」って言ったらど突かれて「ハゲには明依のホントの良さは分からんわ。頭に何詰まっとんじゃハゲ」と言われたことを思い出した。
確かに明依はちょっとうるさい奴やけど、長く接していくうちによく気が回ることを知ったし、人の嫌がる仕事も率先してする、それに押し付けがましくない。
付き合いが長くなればなるほど、気になる存在になっていった。

『ねえねえ、真子!部活の日程表もうもらってる?』
「いや、まだもらっとらン!」
『あ、じゃあこれ渡しとくね!!来週の3連休みんな試合なんだってさ!』
「ホンマか?オフ1日くらい欲しかったワァ。」
『でも、再来週は中間テストだから来週の木曜日からテスト休みだよー?』
「それもイヤや…」
『えー、でも真子古文得意でしょ?教えて!!ね?』
「考えとく!」
『なにそれ意地悪!!あ、じゃあ檜佐木君のところにも日程表おいてくる!』

そう言って明依は走り出した。
そういや1年の秋くらいから付き合っとったなあ。隣の隣のクラスに走っていく明依を目で追う。
あんまり修兵のいい話聞かんのやけど、これは本人らの問題やから部外者が口出すのもアレやしな…。でも心の中でおもろないなァ…と呟いた。

急に社会科係のクラスメイトが「次の世界史、視聴覚室でやるってー!」と言ったので教室は慌ただしくなった。オレも移動の準備をして教室から出ようとした時ひよ里から
「ウチ、山本のじいちゃんに呼ばれとったから職員室寄るから先いくって明依に伝えて」と言われたから
廊下から明依を探すと明依はまだ2組にいた。一緒に移動使用としていた羅武に「先行っといてやァ」と声をかけ教室の中に戻り机の上に用意してあった明依の社会の教科書とノート、筆箱を持って再び廊下に出た。
明依はちょうどこちらに戻ってこようとしているところだった。

「明依!次移動やって。」
『うそ!持ってきてくれたの?』
「あとひよ里が職員室よるから先行く言うとったでェ。」
『そっか!ありがとう!!』
そしてなんとなく、二人並んで歩き出した。

昨日見たドラマが面白かったとか、恋次が新しく美味しいたい焼き屋を見つけたらしいとか、この曲いいから聞いてみてとか話しながら3階の視聴覚室へむかう。


階段を登ってる時に下から体育を終えたであろう上級生が階段を登ろうとしてきた。したから勢いよく騒ぎながら登ってきたのになんだか急に階段を上るペースがガクッと落ちてコソコソ話をしている。明依はおしゃべりに夢中で何も気づいていない。
オレはハッと気がついて明依の横から後ろ側へまわった。

『真子?』
下からは控えめな落胆の声が聞こえたような気がする。
明依はおしゃべりを止めてきょとんとした顔でオレを見た。


「ちょっとは気ィつけや!!」


「わ、パン……もう、真子!バカ!」
明依はオレの肩をバシバシ叩きながらやっと気づいて顔を赤くした。




君は、
誰にでもスキだらけ
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