華のないお茶会
「それで、これは一体何の集まりなんだ?」
小さなカフェの一角。席につくなりシグレはそう切り出した。ほとんど貸し切りに近い店内で、男三人でテーブルを囲む。その状況が理解できなかった。
「んー、そうだねえ。言うなれば……男子会?」
「男子会?」
「そう、女子会ならぬ男子会」
ヒロムの口から出た一言に、シグレは勿論ヒナタも目を丸くした。大きく頷くヒロムの顔は大真面目だが、対する二人の顔には呆れの色が広がっている。
「俺、忙しいんだけどな……」
「俺だって予定たっぷりなんだけど」
「主にふーちゃんとの」
「そうそう」
「……一緒にしないでほしいよ」
ふうの名前が出た瞬間笑みが広がったヒナタを見て、シグレが長い溜め息をついた。運ばれてきたコーヒーがほんの少し心を落ち着かせてくれるが、それも焼け石に水かもしれない。
「ふーちゃんなら大丈夫だよ。さっきメネちゃんに捕まってるの見たから」
「いや、ちょっと待て。それのどこが大丈夫なんだ!」
「だから、ヒナタの予定はキャンセルで大丈夫ってこと」
「大丈夫じゃないだろ! 待ってろふう! 今俺が助けにーー」
「行かない行かない」
立ち上がったヒナタの服の裾を掴んだヒロムが冷静に引き留める。
「最近お前が独占してたんだからたまにはメネちゃんにも譲ってあげなって」
「う……」
「ふーちゃんだって少しは気分変えたいじゃん? ……あんまり変わらない気もするけど」
後半はヒナタには聞こえないように呟きながら、ヒロムはにっこりと笑う。まだ少しそわそわしながらも、ヒナタは落ち着いたようだった。
ヒナタの服の裾を離して、ヒロムはストローでグラスの中の氷をかき混ぜる。それから、他愛もない世間話を始めた。
徐々に盛り上がっていく会話の中で話を振られたシグレは、苦笑しながらそれに応じた。一連の流れについていけずに見守っている内に忘れ去られたかという不安は杞憂だったようだ。
「今度はさー、星澤達とかも呼ぶか?」
「あ、それもいいね」
「いい世代間交流になるかもな」
「ナウいって本当に硬いよねえ」
ーーそして、男子会と言う名の集まりは、気が付いたら場所を変え、長々と続いたのだった。
------end
和泉さま
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