05-01


7月。
CEDEF本部に、珍しく来客があった。

「っつーワケで色々頼むな。ディーノ。」
「しゃーねぇな。アンタの頼みじゃ断れねーや」

執務室で沢田家光と打ち合わせを終えたのはキャバッローネファミリーのボス・ディーノである。
美しい金の髪は夏のイタリアの日差しを浴びてキラキラと光り、本人の明るい気色とも相まって王子然としたオーラが漂っていた。

最近頻発しているCEDEFのフロント企業への襲撃事件のしっぽを掴むため、沢田家光はいよいよ重い腰をあげた。
隠れ蓑であるフロント企業を潰されてばかりでは、本来CEDEFが行うべき業務であるボンゴレのサポートもやがてままならなくなってしまう。
そのため、ボンゴレと仲の良いキャバッローネに情報提供などの捜査協力を依頼したのだ。


「それにしても大変だな。狙われてるのは解ってても、相手の狙いがわかんねーんじゃ対処の仕様がないな」


ディーノの傍に控えていた黒髪の側近・ロマーリオは、顎髭に手を当てながらそう述べる。
すると家光は「まぁ、ウチとしては先に相手を見つけて狙いを吐かせたいよなぁ」と肩をすくめた。



「ま、なんかわかったことがあればすぐに知らせるさ」
「恩に着るぜ」



ディーノはそう明るく笑ったのちに、執務室の中をぐるりと見まわした。
その視線はうろうろとして、何かを探しているかのようだった。
家光はにやにやと顔をゆるめながらディーノに問う。

「ん、どうした?探しモンか?」
「あ?ああ、いや…」

ディーノが慌てて手を振れば、その背後からすっとティーカップが差し出される。
ほこほこと湯気を立てるそれが視界に入ったディーノは、ばっと振り返って両手を広げた。
そう、彼はこの時を待っていたのである。



「おお〜〜!会いたかったぜ俺の可愛い妹!!さぁ兄ちゃんの胸にドーンと抱き着いてこい!」



そこにいるのは、表情は乏しくも、美しい橙色の瞳を持つ少女のはずだった。

はず、だった。


……

………

…………



暫くの沈黙ののち、目の前に両手を広げられた蒼い目の少年は、申し訳なさそうに苦笑いした。



「あ…すみません、美冬じゃなくて……」

「…ふが…っ」



うだるような真夏の暑さに見舞われる本日のイタリアに、まるで木枯らしのような一陣の風が吹いた。
ディーノは白く灰と化し、膝から崩れ落ちていく。

ロマーリオはやれやれと首を振り、家光はからからと笑い。

…そしてバジルは複雑そうに苦笑いを浮かべることしかできなかった。



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