02-04
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翌朝。
本日並盛中学校の入学式である。
入学式は10時から開始される。
そのため、新入生は8時半に、2・3年生は9時半に登校という変則的な時間割になっていた。
朝8時。
柊は何食わぬ顔で登校し、教室へ向かう。
校門から玄関までを見下ろすことが出来る2年A組の教室は、ターゲットである沢田綱吉の監視にはもってこいの場所だった。
幸い2・3年生は入学式の準備をしている生徒会連中以外に人の姿は見当たらない。怪しまれず堂々と監視できるこの状況を逃すつもりはなかった。
がらり。
柊が2年A組の教室を開けると、案の定そこには誰もいない。
そそくさと窓側の自分の席にかけた柊は、鞄からいそいそと双眼鏡を取り出して周囲を見渡した。
「…通学路、クリア。横断歩道、クリア。周囲の木陰も大丈夫…上空も不審飛行物はなし…」
各所の安全を確認して、あとは沢田綱吉が登校してくるのを待つだけ。
そんな時だった。
がららららっ
どたどたどた!!!!
けたたましい音と主に教室の扉が開いた。
「おお!転校生極限に早いな!!!」
「!?」
大音量に柊がびくりと肩を震わせ、振り向けばそこにいたのは隣の席の男子・笹川了平。
柊は驚いて双眼鏡を取り落としそうになった。
すると笹川は「ん?朝から野鳥のカウントでもしているのか?」と斜め上の予想を口にする。
「ま、まぁそんなところです……(カウンター持ってないですけどね!)」
おおっぴらに「通学路周辺の安全を確認していました」等と言えるわけも無く、柊は苦笑いしながら笹川にそう答えた。
すると、窓の外からざわめきが聞こえ始めた。ぱらぱらと新入生が登校し始めたのである。
(ま、まずい!!)
柊は慌てて目を走らせるが、新入生の中にまだ綱吉の姿は確認できない。
さっさと笹川に去ってもらって、何としてでも監視を再開したい。もしくは自分が移動するべきか…?
そうやって柊が一瞬迷った隙だった。
「い、いかん!!新入生が来おった!!」
笹川が妙に真剣そうな顔をして叫ぶと、がしり、と柊の手首を掴んだのである。
「転校生!お前ちょっと手伝え!!!」
「え?!」
椅子から引っ張り上げられて立たされた柊は、突然の出来事に固まった。
そんなカチコチの柊におかまいなしで、笹川はずるずると柊を教室の外へ連れ出して、どこかへ走り出した。
「あ、あの、笹川君…っ」
「急げ転校生!時間が無い!!」
「え、えええ〜……」
CEDEFの職員たるもの、敵襲への対応は身に染み付いている。
金融や法律を扱っていたので、交渉術にも長けている。
だが、強引なクラスメイトの対応への仕方は、わからない。
まさに、なすがまま。
柊は笹川によって見知らぬ並盛中の廊下をひた走ることになった。