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 正直に言おう。おれはすごく疲れていた。色々ありすぎた。だからこう、ムラムラしていた。いつもムラムラして変なことばっか考えてんだろって? それはそう。
 だからこの考えはあくまでも言い訳でしかないし、それどころか内心でのことなので、おれからおれへの言い訳にしか過ぎないのだ。何故、おれが言い訳をしているかって? それはね、罪悪感まみれだからだよ!!!

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 その日もおれは労働に勤しんでいた。変わったことと言えば、クザンさんが遠征のために本部にいなかったので、サカズキさんのところで働いていたこと。それからおれが珍しく疲れを残した状態で出勤していたこと。この二点くらいだろうか。
 これでもおれは仕事をしているときは真面目だ。お金をもらっているのだから、精一杯働く。クザンさんのようにサボろうだなんてことは考えたこともない。だから万全の状態で働くべきだと思っているし、体調管理込みで仕事だと思っている。とはいえ、人間だから体調不良もある。そういうときは仕事を休むことだってある。だが今回はそういう話ではない。

 借りた本が面白くてつい夜更かしをしてしまい、休むほどではない疲れによるダルさ。社会人としてはあまりよろしくない事態だ。本を読まなくたってここのところ色々と立て続いていたのだから、おれは結構疲れていた。だからきっちり休まなければならなかった。

 とはいえ、休むほどではないダルさで仕事に支障が出るほどでもなかった。通常通りにサカズキさんの後ろについて、通常通りにサカズキさんのフォローに回って、通常通りにサカズキさんの書類を提出しに行ったりするだけのお仕事だ。失敗する方が少ないような、そういう仕事だ。
 でもすこし、通常以外の思考も混じった。サカズキさんのうなじを見て、なんかこう、………………仕事中に考えてはいけないようなことを考えてしまったのだ。なんかその…………えっちだなって。

 いやおれが悪いよ! これはおれが悪い! 疲れているからって仕事中に上司にそんな目を向けてはいけないよ! わかってる! おれが悪い! 10割どころか100割おれが悪い!

 幸いだったのがサカズキさんがおれのそういった視線に何も思わなかったことである。これが女の子だったり、あるいは勘のいいひとだった場合、自分がいやらしい目で見られていることに気が付かれて、ドン引かれていたことだろう。そういう意味ではサカズキさんでよかった。クザンさんだったら逆に何もえっちなことは考えなかったかもしれないけど、まあ、それはそれ。

 なんかさぁ! うなじがさぁ! すごいえっちなんだよ! きれいに整えられててさぁ! こんなこと考えちゃいけないってわかるんだけど、すごい無防備な後ろ姿でさぁ! 普段立ってたら見えないような位置だから余計にさぁ! 見えないとこ見えてるわけじゃん! そんなのえっちじゃん! えっちです! こんなの見せられたら舐めまわしたくもなるよ! わいせつ! えっち! もう!

 いや違う。なんか今責任転嫁しそうになった。おれが悪い。なんかそういうテンションになっちゃっているおれが悪いんであって、サカズキさんもサカズキさんのうなじも何にも悪いことはないのだ。仕事中に何を考えているんだ本当に。馬鹿なの? いい加減にしてくださる?

 そんなふうにおれは一日、内心でテンションを乱高下させていた。ただでさえ疲れていたのに、そのせいでものすごく疲れてしまった。自業自得のゴミ野郎である。
 けれどそんなゴミ野郎の暴走は内心だけでどうにかなり、一日の仕事を終えることができた。よっしゃー! 勝ったぞ! いや、勝ってない。どう考えても負けている。途中経過がダメ過ぎです。

 お疲れ様です、とサカズキさんに声をかけて、おれはさっそく帰ろうとカップなどを片付けた。執務室に戻ってくると、サカズキさんも今日はこれであがるつもりなのか、机の上を片付けていた。うーん、几帳面。やりっぱなしで帰ろうとするクザンさんにも見習ってほしい。


「ナマエ、終わったか」

「はい。今日はありがとうございました。明日もよろしくお願いいたします」

「ああ。ナマエ、この後は帰るだけか?」

「はい。まっすぐ帰るつもりです」


 あ、これ送ってくれるんだろうな、と思ったので素直に答えた。疲れているので早く帰って風呂入って寝ようと思う。よこしまな考えになるのは、たぶん全部疲れているせいだから。そうじゃなかったらこんな仕事中に上司にムラムラするなんてことはしないから!  絶対そうだから!


「なら飯でも行かんか」


 あっ……。


「いいんですか?」

「無理ならそもそも誘わん」

「なら是非!」


 選択をミスったとしか言えないと思う。仕事も終わってプライベートで、今までムラムラしていた人と二人っきりでご飯に行くとか割と地獄だと思うの。でも今の断れる? 断れるわけねェよなあ! このあとまっすぐ帰るだけって言ったのに、好意的な上司のご飯断るなんてことできる!? できねェ!! できません!! 残念!!

 というわけで連れてきてもらったのがこちら、高級料亭〜! ウッ! 泣きそう! 個室だよ! 可愛すぎるナマエちゃんと三大将のサカズキさんがラーメン屋で済むとは思っていないけど、個室はダメ! 今は本当に困っちゃう! 絶対気遣いなのはわかってるんだよ! でもつらい! ムラムラしてるから!
 これがクザンさんだったら絶対ラーメン屋とか、めちゃくちゃ気軽なところだから平気なんだけど、サカズキさん、おれを連れて行ってくれるの毎回いいお店だから絶対そうだと思った! 今日じゃなければ普通にうれしいんだけど、今日ばかりはダメ! 敗北しそう!

 対面に座ったサカズキさんは、正義のコートを脱いでいて、執務室よりも薄着になっている。後ろに立つ機会がなくてよかった。脳みそおかしくなっちゃうところだった。


「ナマエ、食いたいもんはあるか?」

「好き嫌いとかあんまりないのでおまかせします」


 わかったとばかりにうなずいて、それからお店の人を呼んで適当に頼んでくれる。それが終わったらマジで二人っきりの時間だ。料理さえ来てしまえば料理の会話でいいが、今はムラムラしていて会話の内容も思いつかない。頼んでくれている間に何か会話を考えておかねば、無言になりかねない。無言になると、間違いなくえっちなことを考えてしまう! それだけは避けなければ。

 えーと、こういうときの会話ってなんだ? 仕事の話はあんまり外でしない方がいいし、友達とか? え、マライア? マライアとの会話なんて下ネタばっかじゃねェか! サカズキさんにそんな話できるかよォ! いや、ボルサリーノさんにもセンゴクさんにもできないような話しかないけど!
 うーん、あっ思いついた! 本の話! おれが読み過ぎた本の話をしよう! あれは図書館で借りただけのミステリー小説! あれだったら話しても問題はなさそうだ。

 そうこうしているうちにサカズキさんによる注文が終わり、お店の人が出て行った。もしサカズキさんが何も話し始めなければ、こちらから本の話題を提供しようと思って目を合わせると、サカズキさんから話し始めてくれた。


「どうじゃ、最近のクザンは」

「遠征に行く前に一応、事務仕事は終わった状態で行かれましたよ」

「……当たり前のことのはずが、おかしく聞こえよる」


 クザンさんはおれが来る前はそれはそれはひどかったようだ。おれを雇い入れてくれた責任から仕事をするようになったのだろう。おれを雇うために申し訳ないような気持ちと、いや、おれのこと抜きでそれくらいの仕事はしてくれよという気持ちの板挟みになってしまう。
 実際三大将の仕事は偉い人なだけあって、確認の書類だのなんだのがかなり集まってきて、大変なことになっているのはわかる。だからこそ溜めないでバンバンこなしていく必要があるのだが、いけないことにサボりというのはクザンさんだけがやっていることではない。ガープさんがやっているのだ。だからクザンさんもサボるようになって、クザンさんの部下の一部でも似たようなことをしている人がいるっぽい。下の人に関してはおれもよくわからないけど、クザンさんがそれで怒られていたので多分そうなんだと思う。


「サボり癖がよくなるといいんですけどね」

「それは本当にクザンか?」

「……怪しいかもですねぇ」


 あははと笑っている間に、お店の人がやってきてお通しを持ってきてくれた。コース料理なのでお通しではなく、前菜か? おれもそこらへんよくわからない。
 きれいな料理にホッとする。これでえっちなことを考えずに済む。おれは助かったんだ!

 手をあわせていただきますをして、サカズキさんと二人で食べ始めた。サカズキさんは豪快な見た目にかかわらず、丁寧に食事を取る人だ。端でつかみあげられたお通しが、サカズキさんの口の中へと吸い込まれていく。赤い舌と、白い歯のコントラストが、目に焼き付くようで。…………アッ……料理食べてるとこもえっち……では?

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 帰ってからのこと? ちょっとそれは誰にも話せないかな……。一つだけ言えるとしたらおれはゴミカスクズ野郎だってこと。あと、その、ちょっと懺悔から死にたい気持ちかな……。

迷える子羊、自分を呪う

アイゼルネ・ユングフラウで相手は赤犬でお願いします!海軍本部でも、違う場所でも結構ですので、敵に攻撃されそうなところを助けられる際胸キュンでも制服が破れて男らしい肉体が見えて♂キュンでも入れていただければ… @匿名さん
リクエストありがとうございました!



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