あ…ありのまま今起こったことを話すぜ! と某ナレフの真似をしたくなるくらい訳のわからないことが起きたので、説明しておきたい。誰にって、そりゃあ上司にだよ。だが今回起きた事件のせいで、ぶっちゃけそれすら厳しくなっている。無断欠勤するような人間じゃないことが功を奏して、誰かが気づいてくれれば、多分家まで来てくれると思うんだけど……ぶっちゃけそれがないとかなりきつい状況になっている。

 簡単にいうと幼児化。起きたら子供に戻っていたようで、寝室で呆然としている。おそらく可愛い状態だと思うが、部屋に全身の鏡を置いていないから鏡すら見れないんだよな……。
 ついでにだいぶ小さくなってしまったので、鍵も開けられない状態だ。電伝虫は隣の部屋なので海軍本部へかけることもできない。社会人にあるまじき失態である……くぅ!

 ていうか寝室に置けって話なんだろうけど、実際寝ている時はいいんだけど普通に生活している時に寝室に置いていると不便なんだよな……。もしかしてあれか? 携帯みたいに持って歩けってことか? 面倒くせェ……。まあ確かに持って歩けないサイズじゃないけどさ、持って歩くか? ネットにつながるわけでもないのに? おれは他のネットがつながる機器を持っているのに? ないよねー。絶対そんな面倒くさいことしない。

 とまあ、現実逃避すること約2時間。
 始業の時間になっても来なかったからか、隣の部屋ですんげー音が聞こえてくるが、残念ながらおれにはドアを開けるすべがないので、電伝虫君にはしばらく鳴き続けてもらうことになる。

 ていうかこれ本当に誰か来てくれなかったらおれ餓死することになるのでは?
 いや、その前にトイレ我慢できなくなって漏らして、人としての尊厳を失うことになるわ。可愛いナマエちゃんがそんな目にあうなんて可哀想ですね。なんか美少女(美少年)のお漏らしってぶっちゃけエロゲとかそういうのでよくありそうな題材ではあるけどね……自分がその立場になるのは嫌ですよ。他人事なら可哀想は可愛いだとしても! 自分がなりたくはない! おれはクソ野郎ですからね!
 というわけで誰か早く助けにきてくんないかな……。小はまだしも大はきついっすよ……。

 一応何かあるといけないので、鍵はセンゴクさんに預けてある。初めは面倒をみるって言い出したクザンさんの予定だったんだけど、まあ、サボる人に鍵持たせておいて何かあったら困るし、かといって本部に置いておいて誰かが持っていったら危ないし、サカズキさんとかボルサリーノさんみたいになんだかんだ遠征することのある人に持たせるのはいまいちよくないから三大将よりはセンゴクさんの方がいいかって話になったんだよね。

 だから……センゴクさん早くきて……。

 そうやっておれが項垂れて、ベットの上でゴロゴロしていると、どんどんどん、と音が聞こえてきた。少なくとも隣の部屋から聞こえてきた音ではないようだったが、残念ながら玄関のドアの音とも言い切れない。
 センゴクさんに期待したいところだが、実際問題さ、早くね? って話もあるよね。センゴクさんは元帥、お仕事だって大将たちよりもいっぱいあるはずだ。その元帥が一メイドのためにすぐさま来るかね? いくらナマエちゃんが普段からいい子にしているからってぶっちゃけ無理では????


「ナマエ! いる!?」

「くざんしゃ……!?」


 ちょっと待て滑舌悪すぎじゃない? 喃語じゃない? そこまでひどくはなかったと思うんですけど?
 少なくともこれは乳児のサイズ感ではなくて、幼児のサイズ感だ。滑舌はもっとマシだったはずである。……とはいえ、おれが思っているのは自分の発語である。実際はこんなふうに酷かったのかもしれない。かなちぃ。

 おれの声は多分聞こえなかったと思うが、それでもしらみ潰しに探してくれたのだろうクザンさんがドアを開けてくれて、おれを目にした途端その目をまん丸にして驚いていた。


「まさか……ナマエの隠し子……?」

「しょのボケはきちゅいでしゅ」


 さすがにナマエちゃん隠し子なんていないんだが? というかこの体はまだ性交渉とかしたことないから清いんだが? いつ産んだと思ってんだクザンさんよォ……。
 苦い顔をしながら「ナマエほんにんでしゅ」と伝えると、クザンさんはなんともいえない顔をした。


「ナマエだったら、せめて部屋からは出るんじゃない?」

「ドアノブにてがとどきまちぇんが……」

「いや、能力があるじゃないの」

「あ゛!?」


 そういえばおれ能力者だったよなァ?! 分かっていたはずなのに、すっかり行動から抜け落ちてしまった。
 慌てて立ち上がり、ベットから降りて壁に向かって走っていくと見事すり抜けることに成功した。インリビング……。電伝虫のところまで行ける……。これはギルティですわ……。

 絶望顔で振り返って寝室に戻り、普段よりもずっと大きなクザンさんを見上げた。クザンさんはそのお優しい心を発揮して、しゃがみ込んでくれているけれど、それでもおれは首が痛くなるんじゃないかってほど見上げることになった。自分の小ささが身に染みる。


「ごめんなしゃい……きづきましぇんでした……」


 マジで職務怠慢というか、脳みそすっからかんというか……。ご迷惑とご足労をお掛けしてしまって、申し訳ない気持ちになる。海軍のところまで行ったからって、どうにかなるとも思えないけど、最低限電話だけはできたはずなのだ。社会人として情けないし、助けに来てもらうことばかり考えていた自分が本当に恥ずかしくなる。いい年した大人だっていうのに!
 気持ちにつられるように、なんだか涙が滲んできてしまった。おそらく身体年齢につられてしまったんだろうとは思うが、実年齢を考えるととにかくきつい状況だ。こんなことで泣くんじゃないよ、と内心思っても、涙が止まらなくなってくる。


「えっ、ほらっ! 泣かなくて大丈夫だから! さっき能力も見せてもらったから信用もしてるし!」

「くじゃんしゃッ、ごめ、にゃしゃ、い……!」


 泣かなくて大丈夫だと言われて止まる涙なら、初めっから流してないってね。内心は割と冷静だが表面部分のテンションが乱高下してもう止まらない。どうしろっつーんだこれ。えぐえぐ泣きから、うえええええっていう強めの泣きに変わってしまった……。もう体が言うことを聞きません……。


「あーっ、大丈夫、大丈夫だから!」

「うえ、えええ、うえぇ……!」


 困った顔をしたクザンさんがどうにか慰さめようと、おれを抱きしめてくれる。正直普段だったら絶対にあり得ない光景だろうなぁと思いながら、おれはしばらくの間えぐえぐ泣き続けるのであった……。

とめどない感情よ

アイゼルネ主で何故か幼児化してしまった周りの反応を読みたいです!@匿名さん
リクエストありがとうございました!



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -