殊更今更(短編)→いくつ歳をとっても(略)っていうありきたりなやつ(1000)→ぼくたちはまだまだお若いようで(5000)のifで男主×先天性女体化ドフラミンゴのきみがいてくれてよかった(50000)の続編です。苦手な方はご注意を。


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 小学生になった娘が「パパこれ〜」なんて言って差し出したのは、授業参観の紙だった。幼稚園のときにもあったが、そのときは短期の出張中でドフィ一人に出てもらったので、今回こそはおれは意気込んで有給休暇を取った。ドフィと二人で娘を見送って、そのあとはずっとそわそわしていた。


「フフ、落ち着きのねェ野郎だな。大人しくしとけ」

「いやわかってるんだけどな、おれがそわそわしても仕方ないってことは」


 ドフィに言われ、ソファに腰を下ろすとドフィはおれの分もコーヒーを持って来てくれた。おれがドキドキしたって仕方のないことだとはわかっているのだが、しかしどうにも気になってしまうのだ。娘もドキドキしているんだろうか、いやでもあの子はだんだんドフィに似て肝が座ってきているからきっと全然大丈夫なんだろう。
 まだそわそわしているおれをドフィは笑っていたが、突然おれの耳掃除をしてくれたりして気を紛らわせる手伝いをしてくれた。良く出来た……恋人である。親友から恋人になり、娘の母になってくれてから七年近くが経過している。そろそろ、考えなくてはいけないのではないかな、というか、なんというか。


「ん? どうした?」

「いや、べつに、なんでもない」

「フッフッフ、嘘つくのが下手だな、ナマエ」


 じっと見つめすぎたせいでそんなことを聞いては来ても、ドフィはそれ以上の追及はしてこない。こういう距離感が心地よいと感じながら、同時に申し訳ないとも思う。おれに追及しないのは、多分なんとなくどんなことを考えているかがわかってしまうからだろう。
 それから軽くキスをしたり夜ごはんの支度を二人でしているうちに着替えて家をでなければならない時間になった。いつものスーツに着替え終わり、またそわそわとしていると後ろから笑い声が聞こえてきた。振り返れば、久しぶりに見たパンツスーツ姿のドフィがいた。


「……なんか、やっぱドフィって美人だな」

「はあ? フフ、いきなりどうした」

「そういうぴしっとした格好すると、改めておれのドフィは格好いいな、と」

「フッフッフ! 当然だろう、毎日気を使って生きてるんだ」


 言いながらもドフィは嬉しいようで、口紅のついた唇でキスをしてくる。おいおい、赤くなるじゃねえか、と思っても、なんだかおれも乗り気になってしまってついついキスが深いものになる。ちゅっちゅとしばらくそんな時間を繰り返して、唇を離したころには互いに笑ってしまった。


「ナマエ、口洗えよ」

「ドフィも化粧直せよ」


 二人して口元を綺麗にし、それから娘の通う小学校に歩いて向かった。道すがらドフィと話していると授業参観の科目は、なんと体育である。予想外すぎる。普通こう、道徳とかの時間にして作文とか読むんじゃないのか。自分のときのことはもう覚えていないが、テレビドラマでは大体そういうシーンだったような……? ああでも家族についての作文じゃなくてよかったのかもしれない。本当にママじゃないとかそんな話じゃなくて、いつでもどこでも挨拶がわりにキスしてますとか他の父母の前で言われたら恥ずかしいことこの上ないからな。
 小学校の体育館に向かうと、子どもたちやその親たちがちらほら集まり始め、なんとも言い難い雰囲気を作り出していた。両親揃ってきている家が少ないせいか、おれたちはやたらと目立っているようだった。


「あッ、パパ! ママ!」


 だがそのおかげでおれたちに気が付いたらしい娘が、勢いよくぶんぶんと手を振ってくる。それに手を振り返せば、娘の周りに集まっている他の女の子たちとおれたちを見てこそこそと話し始めた。え、なに? 悪口か何かか……? 内心一人でざわついていると、隣から笑う声が聞こえてきた。


「心配すんな、多分ありゃあパパとママ格好いいねとかそんなんだ」

「ええ? そうなのか?」


 でもたしかに、もし目立つ人がいたらそうやって会話くらいするかもしれない。おれがぼうっと娘を見ているうちに、娘のお友だちのお母さんなどドフィと面識がある人が何人か集まってきて、素敵な旦那さんね〜なんてお世辞を言われたりして親御さんたちとも交流を深められた。
 そうこうしているうちに授業は始まり、準備運動や軽くトラックを走ったりしたあと、みなで縄跳びをしたり平均台をしたりと小学生低学年にありがちなものを次々とこなしていた。そしておそらく子どもたちの最難関、跳び箱の時間がやって来た。勉強はぴんきりだが運動神経はいいうちの子に限って特に心配はしていないのだが、きっと他の親御さんはさぞや心配だろう。派手に転んだりする子もいるし、苦手な子はそもそも飛べない。しかも跳び箱から落ちると結構痛い。


「跳び箱か、懐かしいな」

「たしか高校のとき八段まで飛べた覚えがある」

「そもそも八段までじゃねェか」

「カサマツ跳びでな」

「危ねェことすんなサッカー部」


 こそこそと会話をしているうちにうちの娘の番が来て、予想通り華麗に跳び箱を飛んで見せた。飛び終わったあとおれたちにどや顔をしてくるところが可愛くてグッと親指を立てると、娘も同じように親指を立ててくる。そんなおれたちに楽しそうに笑ってくれるドフィを見て、ああやっぱりおれにはこの人がいないとダメだなと思った。

きみのこれからがほしい

殊更今更の女体化ドフラミンゴの続き@匿名さん
リクエストありがとうございました!



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