男主×先天性女体化ドフラミンゴです。苦手な方はご注意を!



 ドフィとベッドを共にすることはよくある。悲しいかないやらしい意味でないことが大半で、基本的にお許しが出ない限りおれも襲うだなんて真似は出来ない。冗談混じりにそういった振る舞いをすることはあれど、なんせ相手は一国の主。無体は強いれない。それを抜きにしたっておれの大事なお姫様だ、大切に扱わねばなるまい。しかし時折ムラッとしてしまうのも男の性なもので、そのときばかりは目の前に餌を置かれたまま何もできずにいる哀れな犬のようだ。まあ、おれはドフィの犬みたいなものなので、特に文句を言う気はないのだけれど。
 その日も腕枕をしてドフィが眠ったことを確認してからおれも眠りについた。よくあることだ。けれど目を覚ましたらドフィがじっとりとした目でおれを見てきていたのである。起こしもせず、ただただじいっとおれを見つめる目に気が付いて、おれも視線を向けた。声を発そうとしてもうまく出ないのは、寝起きのせいだろう。


「……ドフィ、どうか、した?」

「いいや、別に」


 ドフィはそうつぶやきながらゆっくりと手を伸ばしてくる。おれの目蓋や髪をそっと撫でてくるものだから気持ちがよくて目を細めた。ああ、本当におれってドフィのペットみたいだ。ふわふわした頭でそう考える。けれどおれが仮に犬だったら、ドフィはほかの男におれへするような命令をして従わせることになるのだ。きっと嫉妬が渦巻いて大変なことだろう。幼馴染み兼従僕兼恋人でよかった。ゆるゆると優しく撫でてくれていた手が、不意に頬をつねった。何事かと思えば、ドフィは笑っている。……サングラスで隠されていない綺麗な目、以外は。


「おい馬鹿面、何考えてた?」

「……何ってそりゃあ、ドフィのことだけど」


 むしろおれがドフィに関係しないことについて考えたことがあっただろうか、いやない。と見事に反語が決まってしまうほど、おれはドフィに傾倒している。こうして何度か聞かれたことがあるけど、そんなことは至極今更なことなのにどうして聞いてくるのだろう。上半身だけ起き上がって、ドフィのことを見つめる。まだぼんやりと霧がかった脳内でもドフィだけは鮮明だ。おれもドフィのように手を伸ばす。短い髪はやわらかい。肌もやわらかい。うつくしいドフィ、おれだけのものになるような器ではない、賢くて聡いおれの女王様。


「何が不安?」


 長く一緒に過ごしたせいか、最近のドフィからは妙に精神の揺れが伝わってきているような気がする。事業は成功しているようだし、いまのところ外面的な問題は何もないように思えるのだけれど。……それともローのことだろうか。あのガキのことが心にひっかかり続けているというのなら、おれが始末してきてもいい。ヴェルゴに言えばヴェルゴが捕まえることだってむずかしくないだろう。
 ドフィは「別に」とだけ言った。そんな顔をまるでしていないのに、どうして嘘を吐くのだろう。目元に手をやりながら「嘘が下手だね、お姫様」と笑うとドフィはわずらわしそうに目を細めた。本当に聞かれたくないことならおれも聞きはしないのだけれど、ほんのりと匂わせてくるのなら、本当は聞かれたいのだと判断した。もし聞かれたくないのだとしてもこんなふうに匂わせてしまうほど余裕がないのなら聞いておいた方がいいに決まっている。ドフィは目を閉じておれの胸に顔をうずめてしまった、まるで言いたくないとばかりに。
 困ったな、と思った。できることならばドフィのことはすべて把握しておきたい。それが男としての性なのか、はたまた従僕としての性なのかはわかりかねるけれど。ゆるりと腕をドフィの背中に回す。おれよりも細い体躯。豊満な胸が当たるとすこしばかりどきりとしてしまうがそれはご愛嬌というやつだ。不安があるのならそのすべてを取り除いてやりたいと願うのに、おれでは力が及ばないのだろうか。──なんて、そんなことを考えていたら、ドフィがぼそりと何かをつぶやいた。一言一句聞き逃したくなくて耳を寄せる。


「お前のそばにいる女、鬱陶しい」

「女?」


 誰かいたかな? 妹のことはドフィも気に入ってくれているはずだし、戦力にもなっているから違うだろう。古参にも何人かいるけれどやはり似たようなものだと思うし……女? 女って誰のことだ。周りをうろちょろしてるやつらを必死に思い浮かべるが、俄然として出てこない。


「……わかんねェのか」

「ごめん。全く思い付かない」

「……メイドの、お前に最近つきまとってるやつ、」


 結局ドフィの口から直接言わせてしまって、従僕としてのプライドはすこしばかり折れかかる。色っぽい話、というか恋愛だの親しいだのというドフィの可愛い嫉妬なのかと思って聞いていたのが間違いだったのだ。ただ性別が女というだけの意味だったとは。たしかに最近やたらと話しかけてくるメイドはいるが、業務に支障があるわけでもなければスパイの臭いもしなかったので特になにもしなかった。しかしドフィの視界に入ってあまつさえ煩わしいと感じさせるなど言語道断である。ドアの外にちょうどその気配を感じるし、さくっと片付けてしまおう。起き上がろうとすると、ドフィは眉間にくっと皺を寄せておれを睨んでくる。


「どこ行く気だ」

「ん、外にそのメイドがいるみたいだから片付けて来ようかと思って」


 ゴミ掃除は早い方がいいだろう? と首を傾げるとドフィは破顔してさせた。どうやらおれの提案を気に入ってくれたようだ、と思ったのも束の間、上からのしかかられてベッドの上に転がされる。ぱちくりと目蓋を開閉して見せても、ドフィはおれの上から退こうとはしない。それどころか、チュッとリップ音をわざと鳴らすようにキスをしてきておれのことを挑発しているかのようだった。……これは襲っていいってことなんだろうか。おれの上に跨がって、やらしく目を細めてにたりと笑って、するりと身体を指でなぞったりして。──ダメと言われたらやめればいい。
 そう思ってドフィの腰をつかんで起き上がる。ちゅ、と首筋にキスを落とせばドフィの喉がすこし震えた。視線を向ければ楽しそうに笑っていた。どうやらおれの行動はドフィから見ても正しいようだ。そのまま軽く押し倒せば、ドフィはおれの首に腕を回してくる。軽めのキスを繰り返して、そのうちに舌を差し込み、徐々に深いものへと変えていく。鼻にかかるような息がドフィから漏れて、興奮が上乗せされた。ドフィの服をゆるく脱がせ始めると、ノックの音。ああ、そういえばさっきの。顔を離せば、ドフィはとんとんと首を指さした。おれは続けていていいようだ。ドフィの首筋に顔をうずめ、キスマークをつけていいものかと考えながらも下降してキスを落としていく。


「入れ」


 え、入れちゃうの。おれ、人に行為を見せる趣味はないんだけどな……。思っていてもまだ始めたばかりだし、さほど問題のある状態とも思えないし、とやめることはしなかった。お許しをもらったばかりなのに今やめようものなら今度いつこういう機会が訪れるかわからない。
 失礼しますという声とともに入ってきたメイドが、軽い悲鳴を上げた。おれがこんなことをしてるなんて思わなかったのだろう。ドフィはおれに鎖骨をキスされようともすこしも反応せず、メイドに淡々と話している。ああ、そうか。今日ドフィを起こしにくるかかりだったのか、興味ないからどうでもいいけど。しばらく部屋に誰もいれるなとか、取り次ぐなとか、まあ、必要なことだとわかっているのだけれど、おれのことを無視するのはよろしくないと思うんだ。
 鎖骨を舐めあげてやわく噛みつくと、ドフィはおれの服をきゅっとつかんだ。……ああもう、可愛いなァ。反応がたまらなくて行為をエスカレートさせると、ちょっぴり声をあげてしまったドフィは、ごん、とおれの頭にチョップしてくる。可愛い。ドフィがメイドを下がらせて、おれの名前を呼ぶ。


「ナマエ、」

「どうかした?」


 顔をあげればドフィは「なんでもねェよ」ととても楽しそうに笑っていた。何がそんなに楽しいのかわからないが、ドフィが楽しいのならそれでいい。だって世界の中心はドフィなのだから。行為を再開させると頭を撫でられて、やらしい気持ちやら嬉しい気持ちやら色々なものに襲われる。すべてドフィに起因しているのだと思うと、まだ何もしてないような状況なのに満足感すら沸いてくる。


「ドフィ」

「なんだ?」

「愛してるよ」


 言えばドフィは目を細めて笑う。「当然だろ」と。そう、至極当たり前のことなのだ。ドフィのことを好きにならない人間は頭がおかしいに違いない。おれも笑みを作りながら、ドフィの唇を塞いだ。

終わったらゴミ掃除しなきゃ

ベーゼの呪いの続編とちょっとした地獄の続編@匿名さん
リクエストありがとうございました!



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -