12
「イア フェンランジュ…?(貴女の、愛郷…?)」

驚きを孕んだ声音の主は、この地には似合わない太陽のような黄金の長髪を肩の辺りで緩く結わえた、碧眼の青年だった。

濃紺の長衣は白と紅(あか)で縁取られており、腰には長い布を巻き付けてある。
ちらりと見える柄(え)は、小ぶりのナイフのものと想定された。

「…ミア フェンランジュ(ええ、愛郷だわ)。…ここでは皆、アンスル古代語を話せるのですか?」

――鈴歌の呟いた言葉は、歴史学者でさえ知らない…秘伝などでない限り知りうる者のないアンスル古代語だった。
しかし目の前の、鈴歌より頭一つぶんくらい背が高い青年はそれを難なく口にしたのだ。
すぐさま古代語口調を現代の現地語に変えて質問すると、青年は改めて片膝を地面につき、鈴歌と視線を合わせる。
流暢な現地語、現代のそれでゆっくりと応えた。

「出来ません。それに、この現地語もこの地に生まれ育ったものが話す程度、やがて自然淘汰されると言われています。…ミア フェンランジュナルム ユン “ウル”(…私の故郷での名は“ウル”)。エトゥン ユル イスト(約束は守られました)、イア フェンランジュナルム ユン “リュリ”…レイリエ?(貴女の故郷での御名は“リュリ”…違いますか?)」



prev next

bkm back
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -