鉛色の空から、はらはら、はらはら、白い小さな塊が降ってくる。
だんだん大きさを増して地面を染めてゆくそれをじっと眺めながら、ほうっとため息をついた。
「由良(ゆら)ちゃん」
「あ…夏海(なつみ)ちゃん、待った?」
由良と呼ばれた、肩までで切り揃えた癖のない髪の少女は、自分に向かって小走りで来た同い年の少女ににっこりと微笑む。
「待った? じゃないよー! もう由良ちゃんってばずーっと雪眺めてるんだから。レモンティー、飲み終わっちゃったよー」
栗色がかった猫っ毛の髪に手をあてて、夏海と呼ばれた少女は大げさにため息をついた。
「売店で来年の手帳見たかったのにー、由良ちゃんが動かないからほらー、シャッター閉まっちゃったー!」
「夏海ちゃんだけ先に見たらよかっ…」
「ばかばか! それじゃ意味ないのっ。ふつーはほら、きゃいきゃいしながら互いの手帳を選んだりするもんでしょ?」
「えー、そんな子供じゃあるまいし…私たちもう高校生だよ?」
「子供だって大人だって楽しいことは楽しむべし! 明日こそ一緒に探すよー!」
「はいはい…ほんと夏海ちゃんは――」