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――さて、ここからが本題だ。
フィオレ、このキカイが停止したら、紋章板から見て正面の横三枚、縦二枚の床の上に立ち、この言葉を復唱しなさい。
いいかい、しっかり覚えるのだよ。
王位継承者のみに伝わる古代語…フィオレが15の年に教えたあの言葉だ。

「ユラヌス・トゥ・ミュルズ」

――いいね、もう一度言うよ。
ユラヌス・トゥ・ミュルズ、だ。
最後に、あの語句を付けるのを忘れずに。

さあ、覚えたね?
では、私はそろそろ行くとしよう。



『――我が子よ、強くあれ』

ザザ、という波音のような音とともに、資料室に映し出されていた国王の姿が掻き消える。

最後に小さく、愛しておるぞ、という柔らかな囁きが残り、ティナは両眼を覆った。

ぽたり、ぽたりと、石床に雫が滲んで消えてゆく。
セレストはティナの背中をそっとさすった。







「…大丈夫、わたくしは大丈夫ですわ。隣に立って下さいますか、セレスト」

ほんの少しの間だけ涙を流し、そしてすぐにそれを振り切るように板の正面に立ち上がったティナは、セレストに微笑む。

「――はい、お望みのままに」

セレストが立ち上がったのを確認すると、ティナは先ほど耳にした言葉を、一言違わず復唱した。

「…ユラヌス・トゥ・ミュルズ」

復唱後、ティナは「あの語句」に思い当たる言葉を付け加えた。

「フォーエバー…」

――しん、とした部屋に、流麗でありながら少し不安げなティナの声が響いた刹那だった。

二人の立った床が下降し始める。

「え、ちょっ、危ないっ! ティナ、掴まっていて下さい!」

急な降下に身体の傾いだティナを慌てて引き寄せると、セレストはそのまま降下に身を任せた。




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