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軽く叩いてみる。
――これには、変化があった。
音が、軽い。

「もしかして…」

セレストは石床の溝に器用に懐刀を差し込むと、『床を模造していたもの』を持ち上げた。

それは、石床に見せかけた、石床一枚の半分ほどの厚みの、ある程度の重みのある材質の蓋のようなものだった。

その下にあったのは――

「…ティナ、これです。扉にあったものと同じ紋章が彫られた板があります」

蓋の下から現れた紺色の板には、精巧な浮き彫りがなされている。
おそらくは金であろう装飾は所々はがれていたが、荘厳な雰囲気は変わらない。

セレストは指先でそっと触れてみたが、反応はなく。

「――やはり私では反応しないようですね、しかし危険性が無いとは言えません。…ティナ…」

「確か、時間が無いのでしょう? 大丈夫、触ってみなければ始まりませんわ」

ティナは待機していた部屋の隅からすたすたと歩み寄ると、床に膝をつき、静かに紋章の上に右手を置いた。

――すると。

『…ここに来たということは、緊急な問題でも発生したのかな? どうだろうか、フィオレ』

柔らかく穏やかな低音が響いて。

今日着ていた衣服と同じ服を着た国王が、眼前に現れた。

「――父上!」

ティナが手を伸ばしたが、それは虚しく空を切る――。
そして、その間にも、国王は語り続けていた。

『つい先程申し入れがあってな、近衛隊長のギル・ノスタルジアが人払いした上で接見したいと。…決して外部に漏れてはならない…ラッセルブルグにとっての甚大な脅威が発生したようだ。…しかし私は少々腑に落ちず、万一のためにこれを残しておくことにした』





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