俺は、酔ってたからだけじゃない。
冷静なんかじゃいられなかった。
初めて触るナミの体に興奮した。我慢がきかなくなって、もう幼馴染のキスだけじゃ満足なんか出来なかった。
今まで付き合ってきた彼女達とは比べものにならない。
何だろう?この感覚は。すげー熱くて、熱くて、熱くて熱くて。
でも、心臓が誰かに握りつぶされてるみたいに苦しいんだ。
布越しじゃ物足りなくて。Tシャツの裾から手を差し込んで直にナミの肌に触れた。
腰のあたりから手を滑らせて、柔らかい胸にたどり着いた時。
「ル、フィ…。」
か細く俺を呼ぶ声がした。
その声に我に返ってナミの顔を見ると、ギュッと目をつぶって小さく震えていた。
怯えたように、手を固く組んでいる。
しまった、やらかした。興奮してた頭ん中から一気に血の気が引いて行った。
「ご。ごめん…。」
慌ててナミから離れてソファから降りた。
何やってんだ、俺。最悪だ。
これじゃ他の女と同じだ。俺はナミをそんな風にしたいんじゃない。
ナミを大切にしたいんた。
でも今まで色んな奴とテキトーに付き合ってきた俺が、何を言えばナミにわかってもらえるんだろう?
「ルフィ…何で?」
上体を起こしたナミが、瞬きしたら今にも溢れそうなほど涙を溜めた目で問いかける。
『何で?』って何がだ?
何で彼女と別れたのか?
何でこんなことしたのか?
ナミが何を聞きたいのかわからない。
ダメだ、そんな顔で俺を見るな。
濡れた髪も、赤く染まったほっぺたも、潤んだ瞳も、短パンから無防備に出てる太ももも、このままこの部屋にいたらやばい。
次こそ俺は自分を止められない。
「ルフィ…。」
もう一度俺を呼んで、伸びてきたナミの手を咄嗟に振り払った。
「ダメだ。俺はナミとはセックスしねぇ。」
次の瞬間、パシっと乾いた音が部屋に響いた。
ナミに叩かれたほっぺたじんじんと痛む。
「…最低。」
「ごめん。」
「出てって、今すぐ。」
「ごめん。」
「もう二度と、顔も見たくない。」
「ナミ…。」
「アンタなんか大っ嫌い!」
完全に拒絶をされた。
ぽろぽろと零れる涙を拭いてやることも許されなかった。
自分の部屋に帰って窓の外を見つめる。
ちょうど、ナミの部屋の窓が正面にあって、俺たちは昔からいつも隣にいたんだ。
ナミの部屋は電気が消えて真っ暗だ。
あの真っ暗な部屋で泣いてんのか?
俺が、泣かせた。
俺達はもう、このまま一緒にはいられないんだ。
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