彼らは女神に呪われた | ナノ

彼らは女神に呪われた  









レンside





ハニーが居なくなって約半年

オレ達はレディこと七海春歌が作曲家のST☆RISHとしてデビューが決まった

未だにハニーには会えない

あの日貰った手紙とネックレスだけ、がハニーが居たことを示している

少し…いや、凄く悲しい



「神宮寺さん?どうしたんですか、ぼーっとして…」


「あぁ、レディ。何でもないよ
やっとデビューなんだって思いに浸っていただけなんだ」



いけない、いけない

今は楽屋、気を引き締めないとね

せっかくのデビューライブをぼーっとしたまま終わるのは嫌だ



「なぁ、レン」


「ん?」


「…美嘉、見てくれるかな?」



おチビちゃんは鏡越しにオレを見る

その目は不安で一杯だった



「あぁ、見てるよ
だってハニーはオレ等が愛した人で、愛してくれた人だからね。こんな一大イベント、見逃すはずがないよ」



ウィンクまでキメると、少し驚いた顔をして、おチビちゃんはいつもの笑顔に戻った



「っ、レン!」



いきなりイッチーがオレを呼んだ

ほら、みんな驚いて振り返ってるじゃないか



「どうしたんだい」


「見てください、翔も!」


「んー?」



そう言われてイッチーの持っていた化粧品を見た



「………これ…」


「美嘉がくれたネックレスの柄っ!!」



おチビちゃんの言った通り、鳥籠から飛び立つ鳥が描かれている

まったく一緒だ…



「どうして…」


「これ、化粧品会社のマークですよ?早乙女さんが衣装や化粧品などは専属の会社がいるって言ってました」


「本当かい、レディ」



レディが手に持っている化粧品を見て、そう言った

でも、それが本当なら、なんでそのマークがネックレスに…?



「あー、その会社は私のお母さんの会社だからねぇ」


「「「!?」」」



――懐かしい、愛しい声――

驚いて振り返れば、楽屋のドアを開けて呑気にオレ達に手なんか振ってるハニー

オレは勢い良くハニーに抱き着いた



「あぶなっ、レン!」


「ハニーっ…!!ハニーだよね…?」


「そうだよ、貴方達の愛しのご主人様だよ」



その笑顔は学園に居たときと変わらない、美しい綺麗な笑顔

みんなの前だけど、オレは溢れ出る涙を抑えられない



「相変わらず、泣き虫ねぇレン」


「…嬉しい、から」


「でも、トキヤと翔にも会わせて?」



ハッとしてハニーから離れる

オレだけじゃない

イッチーだって、おチビちゃんだって嬉しいから



「翔、ギュッてしてくれないの?」



おチビちゃんはシノミーの背中に隠れてしまってる

やっぱり泣いてる



「っ…久しぶり過ぎて……ど、したらいいか…分かんねぇ……」


「ほら、翔ちゃん…」



気を使ってシノミーが背中を押す



「……っ!!」


「よしよし」



抱き着いてきたおチビちゃんを優しく受け止める



「あとは、トキヤ…」


「………………」


「…トキヤ?」



イッチーは椅子に座って下を向いている

ぽたぽたと涙が落ちるのが見える



「……なんで…黙って行ってしまったんですか…」


「…私だって別れは惜しいから」


「どれだけ……っ…泣いたことか…!」



抱きしめたのはハニーの方だった



「ごめんっ…でも、私だって…、後悔したんだから」


「……え?」



ハニーの口から出た謝罪と後悔の言葉

オレの記憶が確かなら、初めて聞いたかもしれないな



「黙って学園を出て…最低な人間だって思ってるだろうなぁ、って思ってたんだから。そしたら、みんなあの時のままなんだもん。安心…した」



そう言いながら、イッチーから離れる

"今からライブなのに、目、腫れるよ?"なんて余裕ぶってさ

本当は、怖かったんだね

オレ達に拒絶されるのが…

従順に育てたんだから、そんなわけないのにね

そんなハニーも可愛い



「そういえば、春歌ちゃん」


「はい?」


「当たったでしょ?私の言ったコト」


「ふふっ、そうですね」



ハニーとレディが話すとイッキ達も話に入ってくる



「美嘉、七海に何か言ってたの?」


「学園を出る直前にちょっとね。みんなは絶対デビューするからよろしくねって」


「美嘉ちゃんは予知していたんですねぇ!」


「そんな大層な事じゃないさ」



ケラケラと笑うハニー

さっきまでの弱気なハニーは何処に行ったんだろうね

でも…、それがハニーだ



「…美嘉、そういえばすっかり忘れてましたけど、私のお母さんの会社…とは…?」


「あぁ、シャイニング事務所のアイドルに使われる化粧品を扱っている会社が、私のお母さんの会社なの。まぁ、私の所有物になるのも時間の問題なんだけどね。学園を出ていったのは、引継作業とか…早めに来ちゃってねぇ…」



そんなこと…だったんだ

安心したけどね

オレ達の性で退学にでもなったんじゃないかって、数えきれないほど後悔したんだよ

ここまで来れたのは、ハニーのくれたネックレスがあったから

いつか会えるって思ったから



「さ、みんなそろそろ時間だよ。舞台裏に移動して来な。ちゃんとステージ袖で見てるからさ」



ハニーの声で動き出す

オレとイッチーとおチビちゃんはそれぞれハニーと話してから楽屋を出た



「また居なくなったりしないよね…?」


「大丈夫よ、レン。そう毎回毎回居なくなれないわ。それに…」


「?」


「"プレゼント"持ってきたから、ライブが終わったら渡すわね」



オレ達はそんな約束をして、デビューライブの幕を開けた






































「トキヤー、紅茶頂戴?」


「あ、オレも」


「俺様は…牛乳っ!」


「レンと翔は自分で煎れなさい。それと翔は手遅れだと思いますよ」


「なっ!?ひっでぇ、トキヤ!」


「事実を言ったまでです」


「そういえばハニー、レディが相談したいことがあるって言ってたよ?」


「春歌ちゃんが?連絡してくれればいいのに…」


「忙しいの邪魔しちゃいけないからって」


「えー、寧ろ大歓迎なのに」


「美嘉はもっと真面目に仕事をしたらどうです?仮にも社長でしょう」


「ここで仕事出来るからいいのー」


「でも、俺達が居るからはかどらないんだろー?」


「だって翔が可愛くお強請りするから…」


「だぁぁあああ!!!!」


「…ねぇハニー、オレも…」


「ん?」


「レン!朝から盛らないで下さい!!」


「いいだろ?オレ達の家なんだから」


「時間を考えなさいと言ってるんです!」


「はいはい、みんな遅刻するよー」























彼らは女神に呪われた
(それは、二度と離れられない呪い)








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