「お前のその男タラシは母親似だったんだな」
「酷いわ、社長
タラシなんてそんな…誰にでも手を出してるみたいに言わないで下さいよ。私はトキヤとレンと翔だけですから」
「変わらないだろう」
私はソファに座り、髪を弄りながら社長、もとい学園長と話している
いつものおどけたような喋り方ではなく、真剣な表情の社長
あぁ、お母さんと喋る時もそうだったな、なんて思い出す
「何故、ここに入学した」
「…私の我が儘
アイドルのメイク用品を扱ってるのに、アイドルの生活知らないのって可笑しいって思って…。現場を見ればいいって言われたけど、どうせなら新人になりそうな人を見たくて、納得出来なかった。さっさと社長引退したかったお母さんだから、嫌がってねぇ…」
そういうことか…、と社長がつぶやく
別に意外じゃないだろうに
でも、なんで今更呼び出したんだろう
社長なら入学した瞬間呼び出しそうなのに
「で、そっちの用件は?」
私がそう言うと、社長は引き出しから一枚の封筒を取り出した
くるっと裏返したそこにはお母さんの名前があった
「昨日届いたんだ
"美嘉を会社に戻してほしい"とな」
「………やだ、って言いたいけど、そうは行かないかな」
「あぁ、そうだな
何があったのかは分からないが急用らしい」
「…わーったよ
明日の朝にでも出ていくから、上手く言っておいてくださいよ」
終わっちゃった
私の学園生活
これもまた、必然、なのか
―――――――――――………
――コンコン…
「はい…、って美嘉さん?」
「ちょっといいかな?」
私は学園長室からの帰り道、春歌ちゃんの所に寄った
ドアを開けた春歌ちゃんは驚いた顔をしていて、私はこっそり春歌ちゃんを連れ出した
「お話ってなんでしょうか」
「春歌ちゃんにお願いしたい事があって」
そう…
私の勘が正しいならこの子しか居ないと思った
決断の時、伝える時、愛した時
(ばいばい、みんな)