次の日。
レンは案の定体調を崩した。
"ちゃんと寝てるんだよ"と、レンに釘を刺し家を出た。
私は意を決して社長の所へ行き、経緯を話しに行った。
社長は驚く様子もなく、真剣に聞いてくれる。
そして、話が終わると処分する…とまではいかないが、出来るだけの対応はしようと言ってくれた。
こういう時、本当に頼りになるなって思う。
「高梨」
「あ!真斗、どうしたの?」
あの日のように、真斗が私に気付き、声をかけてきた。
「神宮寺が休みの理由、知っているか?」
「……知ってるけど、教えられないな」
「…え?」
私はそう真斗に言う。
レンが女の子に言い寄られて気分が悪くなり休んだ、なんて口が裂けても言えやしない。
レンの為にも、私の為にも。
「そう…か」
「うん、ごめんね。
でも、レンは大丈夫。私がちゃんと見てるから」
「…それなら、安心だ」
真斗は綺麗に笑うと、仕事があるからと帰っていった。
私も帰らなきゃ、あの家に。
―――――――――――………
オレはいつだって由良に助けられてばかり。
そんなオレが嫌になった時があって、少し強がってみた事があった。
その時、由良は"私は要らなくなったの…?"って聞いてきたからびっくりした。
由良曰く、レンがレンでいれる場所を創りたいって。
彼女の方が男前だよ。
「格好悪いなぁ…」
呟いたオレの声が部屋一帯に響く。
「レン、どうしたの?」
「………は?」
声のした方を見ると、由良が立っていた。
さっき出掛けたばっかりな気がしたけど、時計を見るとあれから1時間も経っていた。
「体調はどう?」
「…大丈夫だよ…?」
「なんで疑問形なの」
由良はクスクスと笑ってる。
オレはなんだか恥ずかしくて布団を深くかぶった。
「それやめな」
由良はベッドに座るとオレの頭を撫でる。
「で、格好悪いの?」
「え!?」
「"格好悪いなぁ"って聞いちゃったけど」
今日は最悪だ。
また顔が赤くなる。
「ふふっ、レンはかっこいいよ」
「…そんな事ないんだよ」
オレは起き上がって由良を抱きかかえる。
「オレ…さ、もっと強くなるから」
「…………」
「強くなって…、由良を守るから。
守られるだけじゃなくて…」
「………そう」
「そしたら…、結婚してくれる…?」
「……ぇ…」
オレは自然に言葉を発していた。
オレには由良しか居ない。
由良が居たから、ここまでやってこれた。
世界で一番、愛してる人。
「…っ……もちろん、だよ」
「ありがとう、由良」
オレ達は泣いていた。
泣き虫とはちみつ(泣き虫は守られていた。ずっと、ずっと。だから、今度は彼女を守れるだけの力をください)
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