泣き虫とはちみつ | ナノ












あの後、私たちは一言も話さず、一直線に帰路を歩いた。

その間、レンはずっと震えていた。

顔は下を向いていて、レンだとばれることは一切ない。

私も気力だけで歩いた。






―――――――――――………






私は周りに注意しながら
無言で鍵を開ける。

レンを中に入れ、すべての鍵をしめる。

すぐにお風呂場に行き、レンを脱がせてシャワーを浴びさせる。

あの女の匂い、指紋…
あいつの存在を消すように水で洗い流す。

私はレンが洗っている間、吐き気が治まらなかった。

汚らわしい。

あんな女がレンに触れるなんて、社長やレンのファンが許したって私は絶対に許さない。



「…はぁ…………」


「………由良…」


「!…レン、大丈夫?」



私が気付かないうちに、レンは髪も乾かし洋服も着ていた。

だけど、いつもと様子がおかしかった。



「オレは大丈夫だよ…だけど……」


「…ん?」


「………ハニーは…、」


「私は大丈夫」


「っ!!」



レンの考えていることはわかった。

私を心配してくれてる。

泣かせちゃうかもしれないけど、私は"大丈夫"と言わなきゃいけない。

レンが弱ってる時、私は強くなきゃ。

強くなきゃいけないんだ。



「…ハニー…、」


「大丈夫だって…「大丈夫じゃない!!」


「!!」


「…っ……由良はいつもオレばっかり…もっと自分のことも大切にしてよ!!」


「……レン…」



私は抱きしめられた。

強く。

いつもは抱きしめる側だからなんか違和感があった。

けど、嬉しかった。

暖かかった。

安心、できた。

抱きしめたレンはやっぱり泣いていて、私が泣かせたんだ、と思うと私も涙が出てきた。



「…ごめんね、レン」


「ホントにバカだよ…ハニーは……っ…」


「……………ごめんね」














prev next



×
- ナノ -