【見所のある国】
-Look, Look, Looking-






くすんだ色の樹木の間を、二台のモトラド(注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)が走っていた。
空は晴れ、乾いた風が吹いている。季節はまだ寒さの厳しい時期だったが、道に雪はなかった。

「次はどんな国なの? キノ」

幼い男の子のような声が聞いた。

「次の国は、見所が多い国だと聞いているよ。エルメス」

少年のような声が返事をした。キノと呼ばれた、モトラドの運転手だった。
その後ろを、もう一台モトラドが追走していて、名前はセシルといった。
運転手はレイという少女だ。二人は同じ目的地に向かって、共に旅をしているのだった。

「へえ。文化? 芸術? あ、それとも建物とか?」
「さあ?」
「……へ?」
「そこまでは聞いていないんだ。ただ“見所が多い”とだけ」

キノは答える。

「ふうん」
「食べ物だったらいいな。レイが再現してくれるかもしれない」

鼻歌でも歌うかのような声だった。

「キノ。それって、ぼくらにとっては二番目に悪いパターンなんだけど」

エルメスが言って、

「一番は?」

キノが聞いた。

「本」




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