狼まであと何秒?[1/3]



「わ、すごいよ、キノ! たしかに海に見える!」

「わかったから、レイ、立ち上がらないで。危ないよ」

「大丈夫だよ。周りは開けてるし、この国は安全だって門番さんも言ってたじゃない」

「そういう意味じゃない。滑るよ、ってこと」

「わかった、気を付ける!」

相変わらず外を見ながら立ち続けるレイ。いや、全然わかっていないよ。

***

ボク達は今、とても安全な国にいる。
治安も土地も人柄もおまけに気前も良いこの国では、国までの道のりが険しいせいか旅人は少ないらしい。
国賓として、ホテル(この国では宿屋と言うそうだ)はもちろん滞在中の費用は全て保障すると国王直々に説明された。

どうやら文明が極度に発達したこの国は、むしろその文明よりも残り少ない自然物が重要らしい。
最高級だと案内されたホテルは周りよりも高い建物で、辺りはもちろん遠くの海までよく見える素晴らしい部屋だと案内係の人が熱弁していた。
残念ながらそれが海ではなく巨大な湖であることを、そこを通ってきたボク達は知っていたが、機嫌を損ねて滞在費を請求されてはかなわないので黙っておいた。


そして、今はこの国で露天風呂と呼ばれている大きめの湯槽の中にいる。暖かいお湯に浸かりながら外の景色を楽しめるというものだ。
この国にはシャワーという文化がなく、体を洗う時は湯槽からバケツでお湯を汲んで使うらしい。
そして最後にお湯に浸かって体を暖めるそうだ。

係の女性に使い方を聞いたところ、驚きながらも事細かに教えてくれた。
最後に「体にはタオルを巻いて下着のようにし、お二人ご一緒にお入りくださいね」とも言われた。混浴という伝統の入り方らしい。
伝統なのであれば経験したいと言うレイの希望により、ボクらは“混浴”を始めることにしたのだ。



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