黒子のバスケ | ナノ

◎ byテツくん

早朝5時半ちょうどになっためざまし時計を止めて、うんと手を上げ伸びをした。

さて今日も1日頑張りましょう!

燕尾服に着替え、身なりを整えた。少し早めに軽食をとったあと、歯磨きをし、寝癖もきっちり直す。そしていざ御主人様の寝室へ。

6時ジャスト。

コン、コン とノックをして、「おはようございます、七海様」と声をかけた。

反応が帰って来ないのはいつものこと。ボクは「失礼します」と部屋の中に入った。

白を基調とした 七海様の寝室は、七海様の性格を表しているように清潔で、穢れひとつない七海様にふさわしい部屋だった。

もう桃井さんが来たみたいだった。
カーテンが開けられ、花瓶の花も入れ換えられている。鮮やかな緑の葉に、桃色の小さな花がたくさん咲いていて、今日の花もまた一段と綺麗だった。

「おはようございます、七海様 」

白いベッドの傍らに立ち声をかけた。それに対し、御主人様から返ってきたのは寝息のみ。表情も気持ち良さそうで、今日は寝苦しくなかったのだろうとほっと息をついた。

それでも起こさなければ、と次に何度か身体を揺すってみた。

「 七海様、七海様。朝ですよー」

『んー……』

寝返りをうって反転はしたものの、七海様 はまだ起きてくれない。

どうしましょうか

困り果てて立ち尽くしていると、ダダーンと大きな音と共に黄瀬くんが入ってきた。

「煩いですよ、黄瀬くん」

「あ!黒子っちいたんスか!」

「七海様が起きてしまいますよ」

「いやいや起こさないと、困るのは七海っちだから!」

黄瀬くんの言葉に、「また君は御主人様をそんなふうに呼ぶんですか」といえば、いつものように「 七海っちの許可は頂いたっスよ!」と笑顔が返ってきた。

「七海っち!朝っス!学校スよー!」

黄瀬くんが大きめの声で、ゆさゆさと身体を揺らす。すると僅かに眉を寄せた七海様がうっすら瞼を持ち上げた。

「ほらね?起きたっス」

何かそのどや顔はかちんときますね。

でも御主人様の前で、そんな発言が出来る筈もなく、睨むだけにしていた。

『ん……も、あさー?』

呂律の回っていない七海様が目を擦りながら上体を起こし始めたので、背中を押さえながら、「そうですよ、おはようございます七海様」と声をかけた。

『テツくん、りょーちゃんおはよう』

「はい、おはようございます」

「七海っち、おはよー!」

じゃ俺、厨房に七海っち起きたって知らせてくるっスと、また勢いよく飛び出していった黄瀬くんの姿に、七海様が苦笑をこぼした。

『元気だね、朝から』

「そうですね。騒がしいくらいです。……七海様、今日の調子はどうですか?」

『良好だよ、テツくん。だからそんな顔しないで?』

ふいに頬に温もりがあてられて、顔を上げれば、七海様が困ったように笑った。

『今日は一緒に学校行けるから』

七海様の言葉に自然と頬が緩む。

「そうですか、では制服お持ちしますね」

『うん、お願いします』

「お持ちするまで、紅茶でもどうぞ。今日のはダージリンティーになります」

金色で縁取れたカップに紅茶を注ぎ、七海様に皿に乗せ手渡すと、『いつもありがとね、テツくん』と、七海様が微笑んだ。

いえ、感謝しているのはボクらの方なんですよ、七海様。

貴方は身寄りのなかったボクに貴方は帰る家をくれた。お父上の反対がありながらも、説得し続けてくれた。そのおかげで今ボクはこうして生きていられてるんです。

ネグレクトされた子



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