- ナノ -




しっかり育つと


今日も依頼なく閑古鳥が鳴いている万事屋の事務所内。
やる事もなく、新八と神楽が定春を連れて散歩に行ってしまい、室内に残るは銀色頭を並べる父子のみで。
娘は万事屋の長椅子で年に不釣り合いな雑誌を無表情で読んでいた。
それを社長椅子に座りながら足を組んで机に投げ出し、ジャンプを読みながらもチラチラと気にするは銀時だ。

「…あのー娘ちゃん?それって俺の見間違いじゃなけりゃ麻雀雑誌だよね?」
「……」

答えはうんとも返ってこず、視線すら向けられない空気に気まずさだけが増す。
ヒクリと頬を動かした銀時はジャンプを置いて娘の方へ向いた。
しかし娘の動く気配はなかったが。

「え、麻雀なんかしてるの?7歳なのに?麻雀してんの!?駄目だッお父さんは絶対許しませ、ぶほぉぉお!?」

呼び掛ける言葉段々と憶測による否定へと変わってしまったが、最後の方の台詞は娘が投げた短い木刀が銀時の顔面にクリティカルヒットして強制終了させられる。
銀時の顔面激突から跳ね返ってクルクルと戻ってきた短い木刀を器用にキャッチする娘。
ちなみにその一連の動作の間、顔も視線も一切雑誌から離していない。
それからようやくパサリと雑誌を下にして冷ややかな半目で呟いた。

「死ね(働け)ば助かるのに…」
「ちょっとォォォソレ別の白髪キャラのセリフゥゥ!!しかも漢字変換間違ってるよねェ!?明らかに俺に仕事探してこいっつてるよねェ!?」

パタリと麻雀雑誌を閉じて立ち上がった娘の後ろに福本的なざわざわ効果音が見えた。
打ちつけられた鼻を手で押さえて片手を振って否定するも、ユラリと立ち上がった様はとても幼女とは思えない。
ダラダラと滝汗を流す父の前に娘は容赦なく立ちはだかった。

「ねぇ、おとーさん。麻雀してみるのもイイかも。狂気の沙汰ほど面白いよね、倍プッシュで」

「賭けるものは何がいい?」と、短い木刀を片手にバシバシしている蒼い瞳は氷のように冷ややか。
そうして銀時の顔スレスレに突き刺さるのは銀時の愛刀、洞爺湖だ。

「おかーさんが長期任務だからって、たるんでると本気で麻雀してくるよ」
「エ、営業イッテキマス…!!」

上ずった声で洞爺湖を引き抜き光の速さで玄関まで走って行った己の父を見送った娘は深い溜息をついた。
麻雀雑誌や散らかったジャンプやら椅子からを片付けて短い木刀を肩に担いで呟く。

「まったくもう…おかーさんがいないとホント駄目なんだから。仕方ないから、そこらのお兄さんたちに“お願いして”パフェ代恵んでもらおう」

と、同じく玄関へ向けて歩き出すが。
人はそれをカツアゲというのをつっこめる存在は誰もいなかった。

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