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「今、何て言った?」

「え?笠松さんがまじ凄いって、うおっ」

その名前を聞いた私は思わず高尾君の手をがっしり掴んでいた。






「いやほんとヤバい、何がヤバいって語彙力が著しく低下するくらいには笠松先輩ヤバい」

「だよなー!冷静なのに負けず嫌いとか、ターンアウェイなんかめっちゃはぇーの!生で見れて俺超感激した!!」

朝、高尾君が笠松先輩について緑間君に話しているのを見て、もしかしてと思い突ついたら見事食い付いた。同志がこんな身近に居たなんて!

「すっごいよね笠松先輩まじかわいい!男前なのにピュアとか…っ!しししし死ぬ!!!っはぁーもうやだ高尾君気が合うー!」

「秋瀬サンめっちゃ目輝いてる、どんだけ好きなの…ってかあんま興奮すると傷痛むから、」

「やだなあ大丈夫だよ高尾君ー。ていうか君こそ人のこと言えんだろ」

思わぬ同志に話しが盛り上がり、テンションが上がりばしばしと高尾君を叩けば「テンション高ぇ」と爆笑された。
当たり前じゃないのさっ!だって!笠松先輩だよっ!
中休みのたびに高尾君と笠松先輩トークに花を咲かせていたら、あっという間に時間が過ぎて今はHR終わり。
今日は沢山喋ったけどエネルギーの無駄遣いをしたとは不思議と思わなかった。笠松先輩すげえ。

運良く笠松先輩に会わないかなと考えていれば、視界の端に黄色がちらつき、そちらを見てぎょっとする。
慌てて身体を前に乗り出して、椅子を後ろに傾けてる高尾君のブレザーの首元を引っ張ると、ぐぇっという呻き声がした。めんご。でも今はそれどころじゃあないんだ。

「高尾氏……なにあれ」

「へ?何って…黄瀬?」

それは知ってるっつーの。
馬鹿にしてんのかこら

「めっちゃ負のオーラヤバいじゃん。いつものウザい黄瀬どこさ行った」

「あー…俺が言うのもあれだけど何かね、」

頬を掻き困ったように笑った高尾君は周りをきょろと見回してから声を潜めて最近の黄瀬事情を教えてくれた。



「……へー、モデルに部活に。そりゃ疲れるわ」
「だよなー」

少し遅れてバスケ部に入部したらしい黄瀬は最近めきめきと部活に集中して実力を伸ばしているらしい。しかも偉いことに部活優先かつ仕事も手を抜かない。へー。しかも一人暮らし。へー。
当たり前のことみたいだけどよう出来るなーと思っていたら伏せていた黄瀬が顔をあげてふらふらっとこっちに来た。

「あ、俺今日秋瀬サンと日直だよね?何もしてないや…日誌は俺が…」

「は?」

「えっなな何スか、」

明らかにいつもと違う癖に何も言わず笑顔を張り付ける目の前の男に何故か腹が立ち、思わず不機嫌な声を出すと、いきなり半ギレされびくりと肩を跳ねさせる黄瀬。なんだよ今日に限ってびくびくしやがって。そりゃあ今までどんなに突っかかられようといきなりキレたことはなかったけど。
というかほんとに今日1日何もしないで日誌はやろうか?はざけんな。ナメんなよ

「今更なんですけど。というかずっとそんなんだったんでしょ?書けんの。いらん気回してる暇あったら部活行けよ」

「え、」

「おら飴ちゃん持ってけ。高尾君、あとはよろしく」

「あいよ、黄瀬行こうぜー」

「えっ、えっ」

日誌をひったくり黄瀬を突き飛ばせば周りから悲鳴が聞こえたような気がしたけど知らない。
ぽかんとしている黄瀬に飴を投げつけて、ちゃっかり黄瀬の鞄を持ってる高尾君に任せれば後はもう安心だ。手のかかる奴だな。
やれやれと思いながら、今日もいつも通り平和な1日でしたと簡単に日誌を書き私も帰ろうかと席を立つ、と

「あ、秋瀬っち!ありがとう!」

廊下から満面の笑みを浮かべてお礼を言いながらぶんぶんと手を振り去っていく黄瀬。と半ば呆れ、笑いながらそれを見てる高尾君。さっきのネガ黄瀬どこ行った。
てか、え?秋瀬っち?私?いや、え?いや私、っちとか名前についてないし。
周りを見ればファン(笑)かと思われる女の子達がヘドバンしそうな勢いで手を振ってた。怖い。



疲れた時はあまいもの!
(っち、て何だよ?舌打ち?やっぱ私?)
(何年前のあだ名センス?)



…………………………
(笑)は、そのままかっこ笑いと読んでください。

 

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