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「秋瀬さん、ノート回収するよ?」

「あっごめん、私書くの遅いし代わりにやるよ」

「ほんと?ありがと!」

今日の私は機嫌が良い。
どれくらい良いかと言うと、いつもなら板書を途中で強制終了させてまで絶対に引き受けないノート回収を思わず引き受けてしまうくらい機嫌が良い。
くそ重いノートを先生に渡せば任務完了で晴れて自由の身だ。流石にスキップは人目があるからしないけど、鼻歌混じりにいつもなら家へと直行な足を方向転換させて駅前に向かう。いらっしゃいませと店員の声に続いて聞こえるのは流行りの音楽。今日は大好きなアクションゲームの発売日だ。

このシリーズをずっと心待ちにしていた。ほんと、年甲斐もなくカレンダーにマークつけて指折り数えるくらい楽しみにしていた。でもそれも今日で終わり。この焦らしプレイから解放されると思うと脱がずにはいられないよねひゃっほう!
脱がないけどね!
綺麗に陳列されたそれの前に立ち、格好良くデザインされたパッケージに手を伸ばす。はぁー私の推しメンがいる…!ばばんと前に出てるのはやっぱり主要キャラだけどその後ろにほら!ほら!!ここ!!!!!ありがとうございます!!

「このゲーム好きなんすか?」

にゅっと後ろから人が現れたと思ったら話しかけられた。え?わた、わたし?周りに人がいないのを確認するが誰もいない。まさか盛大な独り言だなんてことはないでしょ、質問形式だったし。と言うことは私が答えなきゃだめなのこれ。え?

「え、と……好き、です…?」

「ぶっは!なんで疑問形なの」

これでいいのか…?と恐る恐る答えればいきなり吹き出されてびっくりする。え、は?なんで笑うんだよおいこら。
と言うかこの人がんがん絡んでくるんだけど…え?普通初対面にここまで話しかけてくる?
一方コミュ障の私はソフトを手に取ったまま、話しかけられて肩を跳ねさせ笑われて肩を跳ねさせ曖昧に微笑んで相槌を打って…………これが、コミュ力の、違い…!

「…ん?どうかした?」

「え、ああ…あっすみません、私これから用があるのでもう行きますね」

そうなんだ引き止めちゃってごめんねーなんてへらへら笑う男の人にこちらこそもっとお話したかったですなんて思ってもないことを口に出して笑う。会釈してレジを済ませてから盛大なため息が出た。はぁ、慣れないことはするもんじゃないな…表情筋攣りそう…
帰る途中近くのコンビニに立ち寄ってゲームのお供のお菓子といちごミルクを買って家に帰る。レジの店員さんをぼーっと眺めながら、そう言えばもう高校生なんだからバイト出来るんだよなとふと考える。
そろそろ自分のお小遣いくらい自分で稼いでもいいかも。面倒だけど働けば働いた分だけお金が貰えるんだもんな。イコール嫁たちに投資できる額が増える……うん、悪くない。少し考えてみるか。
それよりも今はこのゲームだ。最初は誰でプレイしようかな。ガサガサと揺れるビニール袋の音をBGMに家の扉をくぐった。

さぁ今夜は徹夜だ。



レッツパーリィートゥナイト
(グラフィックやばー!たぎる!)
(うっはチート!)

 

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