もしもし、神様ですか


神様、神様

如月琴子、人生最大のピンチかもしれないです助けてください









ことの始まりはやっぱりあの現場を見られたからだと思う。

中学校ならどこにでもありそうな話し。あんまり目立たない私が何故か突然いけいけな女の子達からの陰口の標的にされた。

まだそれだけならいいけど、その陰口があまりにもでっち上げであまりにも面白くなかったから (あいつが〇〇ちゃんの悪口言ってたとかテニス部の××君が好きだとかそんなんばっかり)
「もっとましな嘘吐けるように頑張って」って少し煽ったら、何様のつもりとか何こいつとか喚き立てられて今時校舎裏に連れてこられたんだけど。

「うっ……ひっく」
「美加子…あいつが悪いんだから、ね、美加子が泣くことないよ」

気が付いたら相手のリーダー的な子が泣き出してた。反論しただけなのに。
まぁ泣かれるのはいい気持ちしないし流石に少し言い過ぎたかなと思って謝ろうと近寄ったら美加子さんとやらにあんたのせいでとひっぱたかれた。

…もう、これは正当防衛だよね。

目には目をだけど、叩いたりしたら腫れるし見えるところは面倒だから。姑息だけど思い切り足引っ掛けて転ばさせてもらった。私優しい。
うっわ砂利だから痛そう。ざまあみろ。


その後何がいけなかったのか女の子達と提携結んでる男の子達に呼び出されたけど、いきなり腕掴まれたからびっくりして一本背負いして逃げた (笑うところ)
そりゃ男嫌いなのに突然近づいて腕掴まれたら誰でも背負い投げしちゃうと思う。柔道の授業がこんなとこで役に立つとは思わなかったなぁ。男の子が小柄で良かった。流石に普通の男の子はむりむり。あと油断しててくれてありがとう。

そのお陰か、あいつは暗黒武術習ってるとか変な面白い噂立ったし、もうちょっかい出されなくなったし、万万歳かと思いきや

「如月さん、ちょっといいかな?」

テニス部の主将に呼び出された。こわい。ラスボス感漂ってる気さえするし何より周りの羨望の眼差しがいたい。
え、何、私幸村とそんな関わりないし。身に覚えないんだけど…
ついてきてと有無を言わない笑顔で着いた先は

「…美術室?」
「そう。入って」

躊躇いなくガラリと戸を開けて美術室に入る幸村の後に続き、きょろきょろと見渡していると窓際で幸村がこっちこっちと手招きしていた。

「俺、よくここで絵描いてるんだ。ほらここって中々景色もいいだろう?」
「そうですね」

確かに二階だけど窓から外を見ると植えられた木の隙間から陽の光が差し込んでマイナスイオンたっぷりって感じ。うん、ここで読書とかしたら気持ちいいんだろうな。でも、だから何だって言うんだろう。
まさか私に穴場を教えてくれただけ?いやいやいや例えそうだとしても幸村と同じ場所に居るってだけであとが怖そうなのに。
ちらりと幸村を見ると、下を見てにやにやしていた。
可愛い女の子でも要るのかと倣って下を見れば……………何だ、なにもないじゃない。
つまらないと思うも、もしかしたら幸村は土質フェチとかなのかもしれない。うん、人の趣味に口出すのはよくないよね。大丈夫、私、口はかた

「如月さん」
「はい!」
「ここ、見覚えない?」

……びっくりした。考えてることバレたのかと思った…
幸村が指す方を見れば何の変哲もない校舎裏。いや、3年間通ってる学校なんだから見覚えあるもないもないでしょ。

「最近ね、毎日この場所で絵を描くのにハマっていてね。ついこの間も描いていたんだ」

幸村は私のなに言ってんのこいつ、という表情に気付いているのか気付いてないのか知らないけど勝手に喋りだした。なんて自由なんだろう。幸村ってもっと真面目!優等生!ってイメージが勝手にあったけど意外とマイペースなのかもしれない。

「そうしたらね、面白いものが目に入って…始めはまたただのいじめかとでも思ったんだ。
別に止めようなんて思わなかった」

なんと。いじめだって。物騒だなあ。
しかも幸村は中々いい性格をしているらしい。むしろここまではっきり言われると清々しい気さえする。まぁでも私もイジメられてる現場に遭遇しても助けようとか思わないしな。イメージだけで神格化されてるとしても感覚はそこらのことなかれ主義な生徒と変わらないってことか。

「で、暫く見てたらね。女の子が叩かれたから流石に先生呼んだ方がいいかなって思ったんだ。
…後で公になった時、何でわからなかったんだって責められても困るしね。
そしたら、叩かれた方の女の子がいきなり叩いた女の子を転ばせて…賢いよね。叩かれた、より転ばされたの方が間抜けで信憑性も薄いから先生に言っても意味ないしね」

外を見ながら楽しげに話す幸村はまるで「昨日妹が先生を間違えてお母さんって呼んだんだ」みたいな気軽さだ。
やっぱり幸村ほんといい性格してる。友達が言っていた性格とかけ離れていてびっくりだよ。誰だよ優しくて物腰柔らかでもうほんと神の子!って言ってたの。
ていうか…あれ、私それ知ってるよ?

「その次の日かな。今度は昨日の女の子が男子に囲まれててね。
まずいかなと思ったんだけど、心のどこかでまた何かやってくれそうな気がして少し見てたんだ。
そしたらその女の子何したと思う?
男子を投げ飛ばしたんだ。まぁ男子は小柄な方だったけど、凄かったなあ…」

え、あれ、可笑しいぞ。
穏やかに話す幸村の話しを聞いていて私はさっきから冷や汗がとまらない。
まさか、まさか見られてるなんて思わなかった。

「ねぇ?如月さん」

じり、と後ずさるも後ろは壁。
目の前にはそれはそれは綺麗な笑顔を浮かべた神の子こと幸村精市。
ああ、デッドエンド…

「そんな君を面白いと思ったんだ」

もしもし、神様ですか?どうか居るなら助けてください。
毎日参拝します。お百度参りだってお供えだって賽銭だって、何なら将来は神社へ仕えて掃除から何から何までやります。

「これからも俺を楽しませてね?」

だから今だけ助けてください。
あなたのご子息がご乱心です、もしもし神様…!




もしもし、神様ですか


(ああああああそれ以上近寄らないでええええ!)
(はいはい、何もしないってば)


 ≫

[back]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -