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放課後。
みやびちゃんが用事で先に帰ってしまったから、いつもよりゆったりと帰り支度をしながらぼーっとする。
本当ならみやびちゃんが部活お休みの日だからクレープを食べに行ってるはずだったけど、急な用事だったみたいだし仕方ないか……あ、お好み焼き食べたいなぁ。

「おーい椿ー!客だぞー」
「は?お好み焼き?」
「いや、客だ」

突然の呼び出しにお客さん?と、聞くはずがお好み焼き?といってしまった。お しか合ってない。
冷静な突っ込みをしつつ手を振りながら私にこいこいと手招いているのは私を呼んだ声の主の結城くん。

いや、ほんと頭の中ではちゃんとお客さんって言えてたんだよ。ほんとだからね、なんて結城くんにジェスチャーで言い訳するも通じるはずがなくがっくりと肩を落とす。無念。
それにしても、お客さんだって。私に?
威張れることではないが私にみやびちゃん以外の仲が良いお友達なんて居ない。
先生にまた雑用を押しつけられるのかな…いやでも先生だったら勝手に教室入ってくるはず。また何か頼み事的なことなんだろうか。
この間香川君の名札を見付けてから誰かから頼み事をされることが多くなった。まぁ嫌ではないんだけど。

席を立って教室の扉、結城くんのところに向かうと、聞き覚えのあるアルトボイスが降ってきた。

「やあ、1週間ぶりだね」
「ななな、なんっ!?」
「ぶはっ、ちょ、椿落ち着け!」

そこに居たのはこの間廊下でぶつかってしまった美人さんで。驚きすぎてガタタッと扉にぶつかった。肩痛い

そんな私の慌てように吹き出した結城くんが落ち着けと言ってくるけどそんなの頭に入らない。何故美人さんがここに居るんだ。お客さん…ってまさか美人さん?人違いじゃない?いやでもさっき1週間振りって…
ぐるぐると思考を巡らせるがまったくわからない。

「おーい椿〜?…駄目だこりゃ」
「混乱させてしまったかな…結城。呼んでくれてありがとう」
「いや、お安いご用。多分こいつも少ししたら復活すると思うからさ。じゃあ俺先行ってるわ」
「ああ」

クラスとかどこで知ったんだろ。だってあの時が初対面だったんだから…
というか初対面の第一印象最悪だな私。ぶつかって土下座して逃げるって……とんでもないな。自分で言うのも何だけど。

「…椿さん?」

大体私はこの人のことを何ひとつ知らないというのに、いや、美人だということはわかるけども。ずっと頭の中で美人さんって呼んでるけど名前すら知らない。
知らなくても今のとこ不自由ないし、いいけどさー、なーんかなあ。

「椿さん」

不意に右腕を掴まれてはっと我に返る。
いけない、完璧自分の世界に入ってた。見ると美人さんが少し困った笑みを浮かべながら私の右腕をうえええええ!!?

「え、なん、はい!」
「やっと気付いた…」

もう、何度呼んでも気付かないんだもんなって言ってふわりと微笑まれる……けどー?いや、うん、綺麗に笑うなとは思うけど。
なんとなく愛想笑い?いやそれともちょっと違うかな。
いや大事だよ。愛想笑い。人生を潤滑に生きていく為の必需品だよ。
でも私は前の爆笑してた時の方が年相応ぽくて良いと…
ていうか愛想笑いってことは、だ。さっきの美人さんの言葉を言い換えると「俺が呼んだら一回で気付くのが普通だろノロマ」って事に……

あははははははは。
いやいやいやいや。まさか。
愛想笑いも気のせいだ、うん。

「…? 椿さん?」
「うぇい!あ、ごめんなさい…それとあの、手…」
「…ああ、ごめんね」

そろそろ離してくれないだろうか、という意味を込めて見やると、じっと一呼吸分くらい見つめられた後、さらりと謝りぱっと離してくれた。手を離す前に一瞬口元がにやりと歪んだ気がしたけど……気のせいか。自意識過剰になってるんだ、気を付けよ。
それより用件の方が先だ。

「…あの、私に何の用ですか?」
「場所、変えていい?」
「へぁ?…あ、はい」

きょろ、と軽く周りを見渡して口元に手を当て何か考えてると思ったのもつかの間、美人さんがいきなり顔をあげたので思わず間抜けな声がもれてしまう。
場所変え…え?なん……あぁ。
美人さんに倣ってふと周りを見れば私に突き刺さる嫉妬と好奇の目。
…なるほど。ありがてえ。







階段をいくつか上り扉を開けると目の前に広がる青い空。
屋上なんて久しぶりに来た。
うちの学校の屋上は陽当たりも良いし花壇もあるから人気があっても良さそうなのに何故かあまり人がない。みやびちゃん曰く怖いかららしいけど、何が怖いんだろう?

ぽけっと流れる雲を見ていれば、話しなんだけど…と美人さんが口を開いたので慌てて視線を向ける

「これ、無かったら困るんじゃないかなと思って」

そう言って差し出されたのは生徒手帳。何で生徒手帳?
……………あれ。なんで私の顔写真…ってこれ私のだ。
私ブレザーのポケットに入れてたよね?


な い 。
パタパタとポケットの中や他に私が入れそうな場所を探すが、本来そこにあるべきものがない。

「え、あの!これ、どこで…!」
「うーん、拾ったのは俺じゃないからわからないんだけどね」

慌てて受け取り確認したけど、顔写真といいこれは私のだと確信を持った。
どこで落としたのか知りたかったけど、返ってきたのは「俺は頼まれただけだから」という苦笑。

むしろ、それでわざわざこんな放課後に来てくれたんですか!

「ありがとうございます!美人さん!」
「美人さん…?」



しまった…!
最近の私はとことん口が緩いらしい。おいどうするのこれ







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