明け方 「リーバー班長珈琲ー。」 「今手が離せませーん。」 「誰でも良いから珈(科学班一同)「自分で入れて下さーい。」 「・・・・・・。」 徹夜で仕事をこなす科学班とコムイ室長。 目の下には隈が出来ていて、疲労と睡眠不足で次々と人が倒れて行く。 止まない叫び声の最中、そんな光景にも慣れてしまった『リーバー』はある資料をコムイに渡した。 「『ニカ』の解析終わりました。」 「ご苦労様〜。」 渡された資料に一通り目を通して行くコムイ。 仕方無く自分で入れた珈琲を啜り、彼は言った。 「問題は無さそうだね。」 「はい。ただ、規定値は満たしているものの最初と比べ内臓機能の数値が低下しているのが少し気になります。」 「・・仕方無いね。次回のメンテナンスから少し課題を追加してみようか。」 「マニュアル通り、接合部の確認と溶液の濃度変更、それでいいっスか?」 「あと血液検査の回数増やして。」 「了解っス。」 ・・本来なら2年前には朽ちているはずだった身体だ。 何時ガタが来てもおかしく無い。 "最期の瞬間(トキ)"を防げるのは彼女しかいない為、生きていてくれなければ困るのだ。 「神様のレプリカ・・か。」 小さく溜め息を吐く。 幼い頃から現在に至るまで"最期の瞬間(トキ)"の阻止という最重要任務を任された彼女。 戦場で闘えるのは5年だと言われていた。 勿論彼女もそれを知っていて、己の余命を宣告された彼女は絶望するどころか希望に満ちた瞳をしていた。 だが再び起こる惨劇を防ぐ為に延命。 時が経つに連れ更に、『神様のレプリカ』の瞳からは光が失われて行った。 始めから兵器として産み出されたようなものだ・・無理は無い。 「あ〜、もう嫌んなっちゃうよ〜あ〜あ〜。」 捕らわれている闇が深すぎて、救う術が見付からない。 「コムイ室長!ブツブツ言って無いで仕事して下さい、し・ご・と!特に今日なんかはニカがいないんスから!」 「彼女がいないと本当、仕事捗らねぇよなあ・・。」 「俺等が悪いんじゃねぇ、奴の頭が良すぎるんだ。」 「部屋にも居なかったし、あの子は何処行ったんスか!」 科学班一同にブーイングを受け項垂れたコムイは、デスクに顔を伏せながらもやる気の無い声で言った。 「彼女は年に一度の祭典へ出掛けたよ〜・・。」 それを聞いた科学班は痩けた表情から一変し、それぞれ拳を高く掲げて叫び出した。 「よっしゃああああ!!」 「それって極上の甘露が飲める、ってことっスよね!?」 「あ、彼女が帰って来るまでに仕事を終わらせて置くんだよ。じゃないと御預けだからね〜。」 (科学班一同)「了解っス!」 そう、彼女は向かったのだ。 普通の人間では参加することの出来ない、尊いモノ達の集いに。 年に一度の祭典、『百鬼夜行』へと。 ---------- 「『レプリカ』、来年も来れる?」 ニカと手を繋いだ仔狐は甘露の入ったランタンを揺らしながら訊ねた。 「どうかな。」 「・・何故?毎年来てるじゃない。」 不安そうにニカを見上げる仔狐。 それを見た彼女は安心させる様に頭を撫でてそれに答えた。 「行けたら、行くよ。」 ・・『不運』な事に、もし、生きていたのならね。 →第三夜に続く ×
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