NO.TIE.TLE | ナノ


「伯爵様は勝つ!我々は幾らでもー・・」


「煩いのよ。」


イノセンスである斧をアクマの首筋に押し付ける。


「ニカは勝つわ。」


赤黒い血が飛び散る。


溜め息を吐きながら辺りを見回せば、乾いた土の上に広がるガラクタ達。


危険なんて嘘じゃない。


ここに在るのはレベル1と2だけ・・幾ら数がいたとしてもこれじゃあ人並み外れた治癒力を持つ私は死なないわ。


斧を背に戻し、帰路に着こうとガラクタを避ける事無く足を進める。


馬鹿みたい。


あれだけの覚悟をしといて結局これ・・本当に私の人生上手く行かないわね。


いっその事自ら命を絶ってしまう方が良いのかしら?


首を跳ねてしまえばきっと思い通りになるわよね?


「っ、」


消えたはずの気配を感じて空を見上げる。


雲一つ無い澄み渡る青空に映るのは、先程とは比べ物にならない位の殺気を放つアクマがこちらを見据えていた。


背に背負った斧を再び抜き、目標に構えて相手の出方を待つ。


アクマは静かに地に足を下ろして首を傾げた。


「エクソシスト・・?」





―・・レベル3のアクマね。





レベル1や2と比べてより人らしく、能力も未知数・・最後に相応しい相手だわ。


「私はエクソシストよ。貴方達を壊す為にこの世に生を受けたの。」


そして、聖戦に勝つ為に計画されて造り出された忌々しいこの身体。


戦場で朽ちる事が出来るのなら本望じゃ無いかしら。


「イノセンス発動!」


微かに光を帯びる斧。


それを合図にして地を蹴り距離を縮めて行く。


微動たりともし無いアクマは私を見据えて微かに口角を吊り上げた。


「何が可笑しい、の、よ!!」


思いっきり斧を横に振って刃をアクマの首へと叩き付ける。


けれど肉を切った感覚は無くて、金属同士がぶつかるような鋭い音が響いた。


跳ね返された・・!


やはりレベル3にもなるとボディも進化してより硬くなってるわね。


「イノセンス第二解放!」


斧が紅く光る。


これで今までと比べて切れ味や威力は数倍―・・もし第二解放でも駄目なら諦めるしかないわ。


「クックック・・」


細く鋭いアクマの目が私を捕え、笑だしたかと思えば四つん這いになる。


「"生"と"死"・・。はて・・受け入れるにはどちらの方が簡単なのだろうか?」


「な、にを・・っ!」


刹那、目の前からアクマが消えそれと同時に宙へと浮く己の身体。


「く・・っ!」


辛うじて衝撃を受け止めたものの両腕に感じる鈍痛に、髪の毛を捕まれ地面に叩き付けられたかと思えば痛みで歪んだ顔を見て更にアクマは口角を吊り上げる。


「どちらにせよ、もう遅い。」





死に際で初めて感じる"生"をお前の全てで受け止めろ―・・







第十四夜 その果てに見えたモノ





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