「っ!」 ガバッと身体を起こす。 予知とはまた違う悪夢を視ていたような気がする・・嫌な予感。 痛いくらいに心音が早い。 誰だかは解らないが、危険に晒されているのは確かだった。 まだ重い身体を起こして急いで科学班フロアを出る。 向かった先は自室。 神田は俺の姿を見た瞬間にベッドから立ち上がった。 何かを知っているような表情だが、覗けない。 覗け、ない? 俺の力が反映しないのはミツキしか―・・ 「ミ、ツキ・・?」 嘘だろ? 「ミツキ!!どこだ!?」 勢い良く自室を出る。 階段を駆け上がり、ミツキの部屋の扉を開いた。 誰も居ない。 残されているのは何時もの甘い香りだけ。 「ミツキ!何処行った!?」 部屋を出ようと振り返れば、神田の肩にぶつかりよろけるが足は止めない。 嗚呼、お前はまた・・2年前のように俺を一人にするのか? なあ、ミツキ・・。 いるなら返事をしてくれ・・!! 「待て!落ち着けニカ!」 後を追って来る神田に腕を掴まれるが振りほどき、続けて向かった先は司令室。 コムイは資料を広げながら珈琲を飲んでいた。 「ニカ・・!?どうし「ミツキを何処にやったんだよ!」 バン、とデスクに両掌を押し付ける。 デスクに散らかった資料が何枚か地面に落下した。 「俺が何も知らないとでも思っているのか?どうせまた2年前みたいにどっかに飛ばしたんだろ!?」 何故引き離すんだ、お前達は何いつもいつもいつも! もう、満足だろう? 嗚呼・・身体から力が抜けて行く。 神田が腕を掴んで立たせようとするが、その気力すら最早無かった。 どうして、だよ。 アイツのお陰で俺はここまで生きて来れたんだ・・。 それなのに護れない。 どれだけ離さないように抱き締めても引き離される。 なあ、ミツキ・・ 何故俺は女に生まれて来たんだ? 男だったらもう少し強かったかもしれない、のに。 どうして・・涙が止まらないんだ? これがヒトの『悲しい』って感情なのか? 嗚呼、 俺は解っていたフリして、何も解っていなかったのか。 ミツキの、事・・ 「ニカ・・。」 肩に温もりを感じる。 涙で濡れた床に資料を置く神田。 「ミツキはこの任務へ出掛けた。」 「任、務・・?」 ゆっくりと視線だけを移して、任務内容を読む。 落ちた涙で文字が歪み読み取れない部分もあったが、生きて帰る事は不可能だと断言出来る程に厳しい内容だと言う事が解る。 「ミツキ・・・・」 俺の所為だ。 あの日に交わした約束何て、本当はどうでも良かったんだよな。 お前が欲しかったのは言葉じゃ無くて―・・ 神田と同じ、だ。 護られていたのは何時も俺の方だったのかも知れないな・・。 掴まれていた腕を強く引かれて身体が浮いた。 見上げれば神田が何時もの仏頂面でこちらを見据えている。 「おら、行くぞ。」 「行、くって何処に・・」 「決まってんだろ、ミツキの任務先にだ。」 任務先? 「ついさっき発ったばかりだ、今ならまだ間に合う。やり直せる。」 やり直せる? つい、零れて来る笑み。 それは神田を傷付ける為のものなのか、それとも自分を・・そんな事は解らない。 「やり直せるだと・・?知ったような事を言うな!お前に何が解るんだよ、長年の溝がそんなに早く埋まるとでも思うか!?」 ×
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