NO.TIE.TLE | ナノ


「ん・・はぁ・・っ」


部屋を暗くして、唇を重ねる。


自分の上に覆いかぶさるようにする神田に、ギュッとしがみ付くニカ。


「辛かったら、言えよ。」


白くて、華奢な身体に顔を埋める。


「は・・ん・・っか、んだ・・ぁっ」


「『ユウ』、だろ。」


意地悪そうに笑えば涙ぐんだニカの瞳が悔しそうに神田を捉え、抱きしめ・・本人に自覚は無いが耳元で囁く。


「ユ、ウ・・・・んっ」


「・・っ悪い・・加減・・きかね・・」





大きい手


動く度に揺れる長い髪


抱きしめて離さない、力強い腕


切れ長の目


テノールの声






「かんだ・・寝てい・・?」


「ああ・・ゆっくり休め。」


暖かい貴方の唇にキスされる。


規則的なリズムで背中を叩かれ、つい、うとうとと眠りへと落ちて行く。


「・・神田・・愛してる・・ずっと・・。」


凄く心地良い。


「ああ・・俺もずっと・・愛してる。」





第一印象は最悪だった。


年下の癖に生意気ばっか言うし・・手は早いし。


どうしようも無い奴だと思っていた。


でも・・何時からだろうか。


辛い時には何時も神田が隣にいてくれて、手を繋いでくれて・・。


知らない感情を沢山教えてくれたね。


優しさをくれたね。


愛情をくれたね。


居場所になってくれたね。


何も知らない俺にとってそれらは全部新鮮で、眩しくて心強くて、支えで・・


永遠に守り続けたい大切なモノになっていた。





俺はずっと・・ずっとずっと貴方の事を愛してるよ。





本当だよ。






カーテンから漏れる木漏れ日に瞼を刺激され目を覚ます。


腕の中で気持ち良さそうに眠るニカ。


笑っていた・・でも、目尻から一筋だけ涙が流れていて、それを拭う。


「どうした?ニカ・・」


幸せそうに笑ってる癖に、何故泣いている?


珍しく、朝の時間をもう少しゆっくり凄そうとニカを抱きしめる。


「俺はいつでも此処にいる・・近くに居る。」


『大丈夫だ。』そう言って両瞼にキスを落とし、釣られるように自分も瞳を閉じた。





「おやすみ、ニカ。」





ニカはあれから目を覚まさなかった。


死んだ訳じゃない、ただ、深い眠りに落ちているだけだと、コムイが言っていた。


でも・・いつ目覚めるかは解からないらしく・・もしかしたらこのまま永遠に眠り続けるかもしれないらしい。





「あれから一年か・・。」


そっとニカが眠っている硝子ケースに手を翳す。


蒼い光・・


最後の瞬間(トキ)に見たあの光と同じ色。


「神田!これ、ダルケルン村の資料だ。」


開きっぱなしになった扉の向こうで、腕の中に沢山の本を積んだリーバーが任務の資料を差し出している。


「ああ、直ぐ行く。」


軽く返事をし、ニカに背を向ける。


「!?」


刹那、視界の隅でニカが瞳を開いた気がして、勢い良く振り返る。


しかしケースの中に在るのは何時もと変わらない穏やかな寝顔をしたニカの姿で・・。


「ンな訳ねぇよな。」





彼女の顔を見上げて、言う。


「行って来る。」





「神田〜早くしろよ〜!ミッテルバルト行きの汽車が出ちまうだろー!」


「うるせぇ今行くっつってんだろ!」





(一生じゃ語りつくせない愛)





→最終夜に続く



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