―7年前 『次は・・ヒトの子として・・生まれ変わりたいな・・』 「うん・・」 『もし・・その願いが叶ったらさ・・』 「うん・・」 『今度は一緒に・・笑い合ってくれるかい・・?』 「・・っ絶対だよ・・?」 『・・・・約束、ね‥』 『僕はどうしてもあの時の約束を果たしたいんだ。』 それは僕のエゴかもしれないね。 『その約束を果たす為にはキミには生きて貰わないといけない。』 でも、本当にそう思ったんだよ。 『何があっても生きて生きて‥生き延びて、どれだけの月日が経っても、年老いても僕の事を忘れないで待っていて欲しい。』 ―・・自分の分身‥神様のレプリカ。 あの日、自分と変わらない年頃の幼い少女が世界の為に戦っていると知り、可哀相だと思うのと同時に酷く愛しく感じた。 時空の狭間でしか生きられない僕にとってはニカだけが『繋がり』だったから。 初めて見た時に思ったんだ。 与えられた運命から逃れられ、『ヒト』として生まれ変わる事が出来たなら、今度はキミに優しく触れてみたいと。 『キミは宇宙でたった一人の僕の妹なんだ。』 愛している‥きっとこの気持ちは幾年経っても変わらない。 「本当に馬鹿‥馬鹿心理‥!」 自分の胸で泣いているニカの身体を一度ギュっと抱きしめてから、手を引き立たせる。 ―・・もう時間が無い。 『ここはキミの居ていい場所じゃないんだ。』 涙に濡れた頬を拭ってやり、額に唇を落とす。 『さあ、行きなさい。』 まだ震える肩を、トンッと押す。 刹那、押された事により一歩後ろへ下がったニカの身体が深い穴へと落ちた。 「―・・!!」 声にならない声をあげながら自分へ手を伸ばすニカの姿を見て彼は微笑み、最後に言った。 『キミは仲間と共に生きなさい。』 身体中に感じる激痛に表情を歪めながら、日の光を感じ目を細める。 目の前に在る心理のレプリカの顔と、こちらに刃を向ける無数の剣を見て完全に覚醒する。 「意識が‥!?」 一度意志の抜けた為にまだ身体が酷く重たかったが、どうにか動かし相手の顔面に蹴りを喰らわせる。 不意に攻撃された所為か、自分に刃を向けていた剣が全て落ち、一気に視界が開けた。 躊躇う事無く間を縮め、心理のレプリカの胸倉を掴んで地面へ押さえ付ける。 「は‥何、で‥っ」 「俺を救ったのはアンタだよ兄さん。」 ―・・これで最後だ 「!? 何だ!?」 突然目の前の景色が割れた。 まるでガラスのように落下して行く景色の中を覗き込めば、既にこの世界では枯れてしまった自然が広がっていた。 青い空。 気持ち良さそうに飛ぶ鳥が羽を休める、緑色の葉をつけた木。 そして、アネモネの花畑。 そんな景色の中心で、仰向けに押さえつけられた心理のレプリカの上に跨がるニカ。 その身体には二本の剣が刺さっていた。 「―‥ニカ!!」 いつか・・ アンタが本当にヒトとして生まれ変わり、また会える日が来るのなら・・大好きな人達を紹介しないといけないね。 俺の周りで連なる幸せの連鎖にアンタを巻き込むんだ。 そうしたらもう、誰も一人にならなくて済む。 ・・寂しくならなくて済む。 それに、教えてやりたいんだ。 誰かと生きる喜びを・・・・そして、恐怖を。 きっとアンタもわかるよ。 だって・・俺が今とても幸せだから。 →第二十八夜に続く ×
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