こんな事、一度も考えた事も無かったが・・ 伯爵もアクマもいなくなって、世界に平和が訪れる日が来たら、俺はどうするんだろう。 レプリカとしての役目は終わるし、もしかしたら存在する全てのイノセンスは消滅してしまうかもしれない。 もし、それでもまだ、俺に『意志』が残り人として生きる事を許されると言うのなら、 笑い合いたい・・ 大好きな皆と、愛する人と。 そしていつか、許されると言うのなら、大好きな人と一緒になって、幸せな家庭を築きたい。 大好きな人と、自分等の子供と一緒に笑い合って、たまにミツキ達が遊びに来るんだ。 緑に囲まれた家で、皆で談笑する。 簡単に見えて、一番難しい・・俺が思い描く一番幸せな未来。 夢・・ 最後の瞬間"トキ"を終えてもまだ神様に生きていいって言われたら、真っ先にキミに思いを伝えたい。 愛してると言いたい。 第二十六夜 最後の瞬間 second 「ニカは何処に行っちまったんさ!」 イノセンスである鉄槌を振り回しアクマを攻撃しながら叫ぶように言うラビ。 彼らは心理のレプリカを見た事がないので、ニカの背後に立っていた『人間のようなモノ』の正体を知らない。 アクマに攻撃を逸早く仕掛けていくクロスは眉間に皺を寄せながらも口を開いた。 「『心理のレプリカ』に連れて行かれたか・・!」 「え・・?」 それを聞いたミツキ、ラビ、リナリー、マリはアクマを壊しながらも驚いたように大きく目を見開いた。 ―・・7年前もそうだった。 『心理のレプリカ』の住む時空の狭間。 どうやら其処は『レプリカ』のみ入る事を許される場所らしく・・エクソシストでさえも入る事は許されなかった。 ただ一つ解かる事は、無理にでも其処へ入ろうとすれば時空の狭間の特殊な気圧により肉体が裂かれ、彼女の居る場所へ辿りつく前に確実に死ぬ、という事。 そして、『心理のレプリカ』が消滅するまであの空間は消えないし、自ら逃げ出す事すらも不可能なのだ。 「俺達の役目は此処に湧き出て来やがったアクマを倒す事だ。『心理のレプリカ』はニカにしか殺せない。」 「・・・・・・っ」 それを聞いた皆は悔やむように唇を噛み締めた。 その中で、斧の柄を持つ手にキュッと力を入れ凛とした表情を見せるミツキ。 途端、赤く光る斧の刃が光を増した。 それに反応するアクマの攻撃を交わしながら、彼女は言った。 「私は、ニカを信じてる。」 そして、自分の周りに蠢くアクマに大きく斧を振り上げる。 地響きと共に爆発していくそれ等。 その光景を見たリナリーとラビ、そしてマリは覚悟を決めたかのように目を合わせ頷いた。 「うん・・ニカは負けない。」 「アイツ、強いから大丈夫さ。」 マリの弦に捕えられたアクマをリナリーがダークブーツでその硬いボディを蹴り、その上からミツキが斧で、ラビが鉄槌で攻撃する。 しかしレベル2に進化したアクマのボディは硬く、攻撃を逃れ、こちらに背中を向けたまま動かない神田の背中に襲い掛かった。 「神田!!」 叫び声を上げ、反射的に目を瞑る。 その内に耳につく爆発音とそれに伴う爆風が襲い掛かり、まさか、と思い目を開くと、 「・・アイツを、信じてる・・」 其処には皆と同様、強く真っ直ぐな眼差しをした神田が両手に刀を持ち、構えていた。 「生きて、帰ってくると・・。」 ×
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