あの光の正体を突き止めるべく、目的地に向かい乾いた地面を突き進む神田達。 彼等が通過して行く道には大量のアクマの残骸と、血が地面を汚していた。 それを誰一人として不思議に思う事無く、寧ろそれを目印にしてこの先にきっとニカがいる・・そう信じて更にスピードを上げて進む。 刹那、マリが両手でヘッドフォンを押さえて皆に聞こえるよう叫ぶ様に言った。 「直ぐ先から、大量のアクマノイズ・・それに混じって聞いた事の無い音が聞こえる!」 それを聞き、一層緊張した雰囲気に包まれ一員はゴクリと生唾を飲み込んだ。 彼が聞いたことの無い音・・それは先程、光が射した場所から聞こえて来るのだろうと。 マリのように音は聞き取れないが、その場に居る誰もが次第に淀んで行く空気を感じ取っていた。 そして、 「「「「「!!」」」」」 遠くに、アクマに囲まれた陰二つ。 「ニカ・・!」 「と、クロス元帥!?何でさ!!」 視界を遮るモノが無い為広い視野で行動する事が出来るが、少し距離があるのでアクマと戦闘をしている彼等は気付いていないのかこちらに見向きもしない。 否、あの二人の場合、気付かないフリをしているのかもしれないが。 「餓鬼共が来た。」 断罪者でアクマを破壊しながら、クロスはニカを横目で見て口を開いた。 「・・知ってる。」 其れに溜息交じりで返すニカ。 返り血を浴び、汚れた手を横に振りアクマを破壊する。 気にしていない素振りを見せるが、本当は胸の重りが更に増して酷く息がし辛かった。 彼に会ってしまうと、どうしても心が揺れる。 彼の胸で泣きたくなってしまう。 ずっと、こうしたかった、と。 しかし、現実と、己の心が正反対過ぎて、もう彼とどう接したらいいのか・・不器用も手伝って解からなくなっていた。 (つらい・・) 自分の弱さを酷く思い知る。 今はまだ強い自分で居たいのに・・。 アクマを一層し終え、自分達の元へ辿り着いた神田達を見てクロスはよぉ、と片手を上げた。 「クロス元帥・・何で・・?」 「居たら悪いのかよ、俺は7年前の最後の瞬間も同じ任務をこなしてたんだ。ニカのサポートは俺だけでじゅーぶんだろ?」 どういう意味を込めてかニコッと笑い、煙草を吹かす。 そんな会話を横にこちらに背を向けているニカをじっと見つめる神田。 皆、ニカの事を気にしていて、今の時間を共有したかったが、雰囲気を察しそれを控える。 リナリーが心配そうに二人を見つめるミツキの手を引き、その場から離れ皆の元へ戻る。 らしくないが、クロスも気を利かせ自ら皆へ挨拶に出向いたのだろう。 暫くの間の後、神田は安堵からか深い溜息を吐き、口を開いた。 「身体は平気か?」 神田の瞳に久しぶりに映るニカの姿。 彼女が教団から出て行った時よりまた少し痩せ、背中が小さく見えた。 マリが一時、ニカを保護した時に知らされた状態は一刻を争うものだったが、今は自分の足でしっかりと立っている為に少し安心する。 ニカは自分の後ろに立つ神田の気持ちが痛い程に視え思わず目を伏せた。 「ああ・・大丈夫だ。心配かけて悪かったな。」 情けない返事。 声が震える。 動揺を隠そうと煙草を持てば、手まで、指先まで、震えていて。 思わず煙草を落とし、自分の手を見つめ、そして両手を覆って俯いた。 「っ、ニカ・・」 自分に近付こうとする神田。 思わず声を張り上げる。 「来るな!!」 これには流石に少し離れた皆も驚き、二人を見つめる。 「来るなよ・・」 ・・もうどうしたらいいのか解からないんだ。 ×
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