子供化

「胡蝶」
「あら冨岡さん、来てくれたのですね」

冴木は今鬼の血鬼術にかかり自力ではどうにも出来ない状態なので蝶屋敷に来ている、と鎹烏から報告を受けて冨岡が蝶屋敷に向えば冨岡を迎えたのは胡蝶しのぶだった。しのぶはやって来た冨岡を見てもニコニコと微笑んでいてそんなしのぶを見て冨岡は少しムッとした。冴木が血鬼術にかかり自力ではどうにも出来ない状態、だと言うのに何故そうも呑気に笑っているのか。そう思えば。

「冴木さんはこちらですよ」
「冴木は、冴木は無事なのか」
「無事だと言えば無事ですけど…まぁ…なんと言いますか」

しのぶは病室へと向かい冨岡はそれに続く。にしても、しのぶの様子が普段と可笑しい。いつもと違って歯切れの悪い説明をするし先程の微笑みも引きつるような苦笑いになっている。冴木はしのぶでもどうにも出来ないくらいの怪我を負ったのか、冨岡がそう少し不安になれば。

「冴木さん、冨岡さんが来てくれましたよ」

丁度病室に到着した。冨岡が部屋に入るとそこには蝶屋敷で働くきよ、すみ、なほの三人が居て彼女らと並ぶようにあともう一人見知らぬ少女が立っていた。三人と同じ服を着ているから新しく働く事になった少女だろうか、それよりも今は冴木だ、冴木の姿が見えないがどこにいるのだろうか。冨岡が部屋を見渡せば。

「とみおかさん!!」

あどけない少女の声が冨岡を呼ぶ。

「とみおかさん来てくれたんですね!」

冨岡が視線を落とせば先程の見知らぬ少女がきよ達から離れ冨岡のすぐ目の前にチョコンと立ってこちらを見ていた。冨岡はこの少女の事を知らぬのに少女は冨岡の名を呼んでくる。ニコニコと嬉しそうにしながら冨岡の目をジッと見ていて、この少女とどこかで会った事があっただろうか、いやないはずだ、だがしかしどことなくこの少女に見覚えがある。目や鼻や口の形、自分の名前を嬉しそうに呼んでくるその表情、この少女…もしや…。

「…冴木か?」
「はい!冴木です!」

そう、冴木であった。背丈も縮み顔もあどけなく蝶屋敷の三人娘と同じ年頃の少女になっていたが正真正銘万城冴木であった。

「その姿はどうしたんだ」
「聞いてくださいよ〜!油断してたら血鬼術をまともに受けちゃって、気付いたら子供になっちゃってましたあ!」

呑気に笑いながらそう言う冴木を見ていつもなら血鬼術をまともに受けただなんて「笑い事じゃないだろう」と誰もが呆れるところだが今の冴木は愛らしい少女…そうだったのかと穏やかに返事をするしかない。

「それで、どうすれば元に戻るんだ」
「まだ分からないんです。しのぶさんが調べてくれると言ってくれたんですけど」
「そうか…ならばしばらくそのままの状態だと言う事か」
「そうなります」
「すぐに元通りの姿に戻れるよう尽力しますので少しの間我慢していてくださいね冴木さん」
「ありがとうございますしのぶさん、お世話をかけます」

そう言ってくれたしのぶに冴木はペコリと頭を下げる。いつもと変わらない仕草ではあるが今は身体が小さくなっているからその仕草もどこか可愛らしくてしのぶは「あらまぁ」と思わず笑みが零れた。

「胡蝶」
「は、はい何でしょうか冨岡さん」
「元に戻れるまで冴木はどうすればいい」
「そうですね、何があるか分からないのでしばらくの間は冴木さんの事蝶屋敷で様子を見ますね。不死川さんにも鎹鴉でお伝えしていますので」
「分かった」

いくら中身は大人のままだとは言え身体が子供になってしまった冴木を鬼退治の任務に出す訳には行かない。冴木はしばらくの間蝶屋敷に留まりしのぶらの手伝いをする事になるだろう。冨岡はこんな姿になってしまった冴木が心配だったがしのぶの元に居るとなれば安心だ。

「冴木」
「はいとみおかさん」

冨岡は冴木に視線を落とすと冴木の頭を優しく撫でる。

「冴木、今の冴木は身体が子供だ。あまり無茶をするなよ」
「分かりましたとみおかさん!」

冴木は元気良く返事をする。

「…」
「とみおかさん?」

それで終わりかと思ったら冨岡は冴木の頭を撫でるのを止めない。

「そんなに頭撫でないでくださいよう!」
「気持ちは分かりますよ冨岡さん…でも甘やかすのは冴木さんの為になりません」
「ああ、そうだな…」

冴木は恥ずかしそうに顔を真っ赤にして冨岡に訴えるが手が止まらないのか、いつまでもいつまでもよしよしと可愛い何かを愛でるように冴木の頭をなで続けていた。

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