登校初日

登校初日の朝。

「今日は使い魔召喚の儀式か…」

本日のカリキュラムを確認しながらアリエノールは学校へと到着した。

「と言う事はカルエゴ様に会えるわ!嬉しい!」

使い魔召喚の儀式はバビルスの伝統行事だ。呼び出した使い魔の質で生徒のランクが決まりそれからクラスも決まる。そしてその儀式を担当するのはアリエノールの婚約者である教師ナベリウス・カルエゴ。今日はカルエゴ様会えるかな、と楽しみにしていたアリエノールだから話は出来ないかもしれないがひと目会えると分かり思わず笑みが零れた。

「あっ」
「おっと、ごめんな!」

その時、一人の男子生徒がぶつかってきた。ぶつかったと言っても肩が掠った程度だから謝る男子にアリエノールは「いえいえ」と言えば彼は足早に去っていく。アリエノールも何事もなかったかのように再び歩き出せば。

「あれ…、っない…!」

なんとなく違和感を感じ左手に触れてみた。すると手首にあるはずのブレスレットが無い。落としたのか、でもそれならば音で気づくはずなのに…。もしかして、まさか。

「はいこれ。君のだよね」

先程ぶつかった生徒に取られたのでは、そう思ったらポンと肩を叩かれて振り向けばニッと笑う男子生徒がアリエノールのブレスレットを持ってそこに立っていた。

「向こうの奴から取り返したよ」

やはりあの男子生徒に取られていたようだ。しかしそれを目の前の生徒が取り返してくれたようで、彼がクイと視線をブレスレットを奪った生徒に向けてアリエノールもそちらを見れば先程の生徒は自分の懐から戦利品が既に消えている事に気づいてもいない様子で歩いている。

「ありがとう!!」
「どういたしまして」

ブレスレットを渡されたアリエノールはパッと明るい表情でお礼を言った。気にしないで、と言いながら全部の指に指輪をしたその男子生徒はヒラヒラと手を振りアリエノールは最後にペコリと頭を下げ男子生徒の下を離れる。そしてアリエノールが少し離れた後彼の元には友達が名を呼びながら近づいてくる。

「ジャズくーん」
「ん?」
「可愛い子だね、彼女知り合い?」
「いーや」

ジャズと言う名のその生徒は小さくなっていくアリエノールの後ろ姿を見てクルリと踵を返す。

「困ってたからちょっと助けてあげただけ」

なんか抜けてて放っておけないよね。
それが後に同じクラスとなるアリエノールに対してのアンドロ・M・ジャズの第一印象であった。





そしてその日の使い魔召喚の儀式も無事終わった。儀式の担当がカルエゴだったからその間アリエノールはずっとそわそわしながらカルエゴを見ていた。だがカルエゴは教師だからてきぱきと試験を進めアリエノールの順番が来ても特別な言葉などかける事も無く他の生徒達と同じように無駄なく儀式を進めた。特に会話なんて交わさなかったがそれでもカルエゴに会う事が出来たからアリエノールはそれだけで満足だった。
だがその後事件は起こる。組が違ったからアリエノールは見ていないがあの特待生である入間がなんとカルエゴを使い魔として呼び出したらしい。入間に召喚されたカルエゴの使い魔形態の姿はなんとも愛らしい姿だった、と噂で聞いて。

「私もモフモフでキュートな姿のカルエゴ様が見たいです!今すぐ入間くんに呼び出されてみてくださいカルエゴ様!」
「呼び出されてたまるか!!そんな事を言いに来ただけなら早く家に帰れ!!」
「モフエゴ様を見るまで帰れません〜」
「帰らんか馬鹿者め!!」

放課後、アリエノールはカルエゴを見つけしつこく懇願するのであった。



  
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