入学式

本日、悪魔学校バビルスの入学式。
新生活に胸躍らせながら登校する新入生達の中にアリエノールの姿もあった。

「どんなお友達が出来るかな。授業や行事も凄く楽しみだな」

余程バビルスでの学園生活が楽しみだったのだろう、アリエノールはニコニコと笑いそんな事を一人で呟いてしまった。

ブエル・アリエノール。この度バビルスの生徒となったブエル家の末娘。ブエル家は薬草学や精神哲学に長け代々医者を生業にしてきた魔界の名門一族だ。アリエノールはそのブエル家の末娘で魔界一の医者と言われる祖父のブエル卿に可愛がられる娘である。

「それに…早くあの人に会いたいな」

そんなアリエノールは学校へ付くとキョロキョロと辺りを見渡した。知り合いでもいるのだろうか歩きながらも目当ての人物を探している。

「どこだろう…やっぱり忙しいのかな」

あと少しで入学式も始まるから新入生は会場に集まりザワザワと賑やかだ。上級生や教師たちも忙しそうでどことなくバタバタとしている。

「…あっ!」

そんな時、アリエノールは人通りのない廊下をツカツカと歩く目当ての悪魔を見つけた。

「カルエゴ様!!!」

彼を見つけた途端アリエノールの笑顔は一際キラキラと輝いた。ブンブンと手を振りながら近づけばその愛らしい声で呼ばれた男はバッと振り向きその途端ハッと鋭い目つきを更に細める。

「カルエゴ様!」
「粛に!!ここで手を振るのは止めろ!!」

自分の前までやって来たアリエノールに大声ではないがそう叫ぶ男…。彼の名はナベリウス・カルエゴ。バビルスの筆頭教師である。

「だって、カルエゴ様に会えてアリエノールはとっても嬉しいんですもの!」
「だって、ではない!それに学校ではその“様”と呼ぶのは止めないか!」

教師と生徒でありながらそんな会話をするカルエゴとアリエノール。新入生のアリエノールはバビルスの教師であるカルエゴとは以前からの知り合いなのだろうか。

「えっ?だったらなんとお呼びすれば?あなたでいいのかしら!それとも旦那様?」
「止めろ…!」
「うふふ、冗談ですよ」

いや、知り合いなんてものではない。

「でも私とっても嬉しいです!婚約者であるカルエゴ様とこれからは一つ屋根の下毎日のように一緒に過ごす事が出来るんですもの!」
「誤解を招く言い方は止せ!!いいかアリエノール、くれぐれも我々の関係を他の者にばれないように!口が滑っても言うんじゃないぞ…!」

カルエゴとアリエノールは将来結婚すると約束しあった婚約者と言う関係なのだ。

「勿論です!私達の関係は一部の方しか知りませんものね!」
「そうだ。もしその事が他の者達にばれたら…」
「カルエゴ様が生徒に手を出す淫乱教師と呼ばれてしまうかも…!」
「馬鹿者!誰が淫乱教師だ!!」

ふざけるアリエノールに声を上げるカルエゴだがこうしてカルエゴと話すのが楽しいのかアリエノールは「冗談です」なんて言いながら楽しそうに笑っている。今まで歳の離れた婚約者と会う機会がとても少なかったからこれから学校で会う事が増えると考えるとアリエノールは嬉しくて嬉しくてたまらないのだ。

「…全く。さぁさっさと会場へ向かえ、もうじき入学式が始まるぞ」
「はぁいカルエゴ様!カルエゴ様を見つけたら手を振りますからその時は振り返してくださいね!」
「誰が振り返すか!!」

アリエノールは最後までそんな冗談を言いながらカルエゴの元を去って行った。カエルエゴはやれやれとため息を付きつつパタパタと走るその可愛らしい後ろ姿を見送った。



  
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