「どう?おじいさま」
真新しい制服に身を包み少女がクルリと回ってみせるとスカートの裾がフワリと揺れた。
「きゃわいい〜〜!!!すっごく似合ってるよアリエノールちゃん!!魔界一可愛いぞい!!!」
そんな少女を見てそれはそれは嬉しそうに声を上げるのは彼女の祖父。
「わしの孫は魔界で一番の美少女じゃわい!!」
「もう、そんな事ないよおじいさま」
「いいやある!アリエノールちゃんが一番じゃ〜!!」
祖父はそう言うと可愛い可愛いと言って制服姿のアリエノールを何枚も何枚も写真に収め、周りに待機している使用人達も「大旦那様は相変わらずお嬢様の事が大好きね」と言って微笑んだ。ご覧の通りこの祖父は孫娘のアリエノールの事をそれはそれは溺愛している。心の底からアリエノールは魔界一の美少女だと思っているし、昔っからアリエノールの事を甘やかし実の親以上に愛情を注ぎ可愛がってきたのだ。
「アリエノールちゃん、今日から新生活が始まるけど怖くない?不安はない?何かあったらすぐにおじいちゃんに電話してね!おじいちゃん仕事中でもすぐに駆けつけるからね!」
そんなアリエノールが本日より名門悪魔学校バビルスに入学する。アリエノールは新しく始まる新生活を楽しみにしているが祖父としては心配で心配でならない。
「大丈夫よおじいさま!学校は楽しいところでしょう?私、たくさんお友達を作りたくてとてもワクワクしているの!」
アリエノールがニッコリ笑ってそう言うとハラハラと心不安げにしていた祖父も、見守っていた使用人達もほんわりと笑顔になった。祖父はうちの孫娘が一番、と思っているが使用人達もうちのお嬢様が一番、と皆思いアリエノールを慕っているのだ。
「アリエノールちゃんは、良い子じゃのう」
「それにね!」
「ん?」
健気で可愛らしい子じゃ、と思わず涙ぐむ祖父の前でアリエノールは一際キラキラと笑顔を輝かせ、
「学校が始まれば毎日のようにカルエゴ様と会えるでしょう?私それが嬉しくって嬉しくって!」
本心のままにそう言った。そう、言ったら、
「お、大旦那様ー!!!」
「大旦那様!しっかり!!」
「お気を確かに旦那様!!!」
余程ショックだったのか、祖父はショックでバタリと床に倒れこむ。使用人達は口々に励ましながら祖父の周りを取り囲んだ。
「あ、もうこんな時間!入学初日に遅刻なんてしちゃったら恥ずかしいよね!じゃあおじいさま、みんな、行ってきます!」
「ま、待ってくれアリエノールちゃん〜〜!!学校になんか行かないでくれ〜!あんな男が居る学校になんか、行かないでくれ〜〜!!!」
これから、アリエノールのバビルスでの学校生活が始まる。
『秘密事』
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