かつての孫自慢

それはもう随分と昔の話。

「どうじゃサっちゃん!うちの孫娘はきゃわゆいじゃろ〜!?」

今日もまたブエルの孫娘自慢が始まった。テーブルに写真を広げ活き活きと語り出す魔界一の医者と名高いブエル。

「ほら見てくれ!これはピアノの発表会の時じゃ!この日の為に特注のワンピースを作らせてのう、よく似合っておるじゃろ!ああこれはこの前の家族旅行で…」
「はいはい、ブエちゃんは本当にアリエノールちゃんの事が好きなんだねぇ」
「当たり前じゃ!目に入れても痛くない存在じゃ!」
「でもあんまり贔屓し過ぎたら上のお孫さん達に悪いんじゃない?」

サリバンがそう言うのも仕方ない。ブエルの孫はアリエノール一人ではなくその上に三人の男の子達も居る。彼らも居るのにブエルの自慢はアリエノールの事ばかりだ。

「勿論みんな可愛いぞ、だがアリエノールちゃんは特別なんじゃ!アリエノールちゃんは親に似ていてどことなくのんびりしていてのう、そこがまた可愛いのじゃが放っておけなくて…。とにかくアリエノールちゃんは魔界一可愛い女の子なんじゃ!」
「そうかいそうかい」

確かに写真で見る限りアリエノールはとても可愛い。花をあしらったワンピースを着てニッコリと微笑むアリエノールはまるでお姫様のようだし魔界一可愛いと言うブエルの気持ちだって分かる。だが孫と言うものを持たないサリバンにとってはそんなに夢中にならなくても、とどこか一歩引いて友の自慢を聞いているところがあった。

「そうじゃ、今日はアリエノールも一緒に連れて来ておるんじゃ!」
「そうなのかい?写真ではいつも見てるけど、実際アリエノールちゃんに会うのは初めてだねぇ」
「アリエノールちゃぁ〜ん!こっちにおいでぇ〜!」

ブエルが呼ぶと扉の向こうの廊下からタタタタッと小さな足音が聞こえてくる。使用人が大きなドアを開けて向こうから一生懸命にパタパタと走ってくるのはまだ幼い少女…ブエルが溺愛する孫娘アリエノールだ。

「おじいちゃま!」
「こっちだよアリエノールちゃんっ!ほら、おじいちゃまのお友達だよ、御挨拶できるかな?」

ブエルの元に到着したアリエノールは「うん!」と元気良く頭を縦に振りサリバンを見た。そして照れているのか少し頬を染めながらもペコリと頭を下げニッコリと愛らしく笑った。

「こんにちは!おじいちゃまのまごむすめのアリエノールですっ!今日はサリーおじちゃまに会えてとっても嬉しいですっ!」

チョコンと一生懸命に挨拶をするアリエノールはとても健気で愛らしくて。これにはサリバンも。

「かっ、かわいい〜!!!なんて良い子なんだ、羨ましいぞブエちゃん!孫羨ましい〜!!!」
「そうじゃろそうじゃろ!」

メロメロになってしまった。

「僕も可愛い孫が欲しいよ〜!!」
「サっちゃんは孫の前に子供じゃろ」
「ううん、僕孫が欲しい〜!そして可愛い孫をでろっでろに甘やかしたいよ〜!」

それからブエルだけでではなくベリアールとレディ・レヴィも孫自慢してくるようになったものだから、サリバンも孫が欲しくて欲しくてたまらなくなってしまったのだった。



  
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