属鞘が居るという島までの道のり、そこへ行く為に、また縄のようなもので造られた橋をカナテ、コトハを先頭にしてあたしたちは歩いていた。

「革、ひとつ気になることがあるんだけど…」
「どうした、巳束?」
「門脇が、ここにいるってことは“入れ替わって”」
「そうだな、アラタのとこに誰かが行っている―――」

あたしが気になっていることを、コソッと耳打ちをするように口にすれば、足を止め 同じこと考えていたと革は告げる。

「お前ら、こんなとこでイチャつかず早く進め――っ!!」
「なっ……!?」
「誰も革と、そんなことしてない!っ」

カンナギに、背中を足蹴りをされた革は躓いてしまう。思わず、叫ぶように否定をすれば先頭を歩いていたカナテが見えてきたという。


「ほら、あれさ!!商業街“スズクラ”」


目の前に広がる光景に驚いて、開いた口が塞がらない。俵、神輿、提灯が煌びやかに島の中央に飾られている、っというか それが一つの建物のようだ。
幸運や金運、商売繁盛の縁起物が所狭しと飾られているのだ。それは、縁起物の熊手のように。

「巳束、アラタのこと気になるけど」
「わかってる。今は目の前の問題でしょ?」
「あぁ、商業街“スズクラ”…ここにいる十ニ神鞘ヨルナミの属鞘のことが、先だ」

行き交う人々に紛れ、同じ道のりへと進めば、関所の様な場所で革や巳束たちは声を掛けられ、止まれと言われてしまう。

「おい!そこ 通行税は?」
「は?」
「通行税?」
「この“スズクラ”は入るも出るも金…“花降(ハナフリ)”1人“銀10”は払う決まりだ」

革と巳束が分からないと、疑問符を浮かべれば金を払わなければいけない仕組みであることを、関所の男が告げる。持ち合わせが無いことを告げれば、働いて稼げと言われてしまう。

「ここは、そういうとこなの。革、巳束っ」
「ひゃー、噂どおり!“銀10”は高ェ〜」
「働くなら、認識札かけて“ヒルコ様”のとこ行け」

紐に付いた札を首に掛ければ、金を払うまでは外せないと言われる。あたしたちは、男に言われた通りに“ヒルコ様”がいる建物へと目指すことになった。


「ヒルコ様?」

「そいつが、属鞘だな。様子を見て近付くならアラタは偽名でも使え。お前の名は噂になってるからな、俺も十ニ神鞘の印はかくす」


革の言葉にカンナギは説明をして、近くにあった装飾品から細い布を拝借し自分の額に巻き付けた。
ひと際目立つ、巨大な屋台船のような建物に辿り着く。この場所が“ヒルコ邸”だと教えられたからだ。建物の中にいる人たちは、忙しなく働いていた。


「すいませーん、ここ“ヒルコ邸”って聞いたんですけど」


暖簾をくぐり、建物の中へと踏みいれば、ひとりの男に新入りが勝手に入ってくるなと止められてしまう。髪の毛先の色が違う、眼鏡をした気さくな感じがする男だ。


「俺を通してもらおうか。俺がヒルコ様のところまで連れてってやるよ」


その男に“花降”無しで来たことを伝えれば、このスズクラは花降(カネ)がすべて。無一文には生きてる価値もない場所、生きたければ働けと告げられる。
ヒルコのいる場所へと向かう途中、何人もの侍女が抱えきれないほど食事を運んでいるのを目の当たりにする。通された場所には巨大な大階段、周りを取り囲むように四方に帳が垂らしてあった。
連れ来た男の名を“スエヒロ”といい、仕事の割り振りは面倒だからとお前に任すという。帳に映し出される影や、声からにしても、そのヒルコの体は巨大そうだ。


「…“面倒”とは問題発言。これはあなたの“お仕事”。…ヨルナミ様がお聞きになられたら、罰を受けるのでは?」
「………ハイハイ…、ちょうど石切り場が空いてるね〜。女は〜」


スエヒロから“ヨルナミ様に罰を”と言われた瞬間に、空気が変わったことに革は気になるが、女と告げられ頭を切り替えてしまう。

「すいません!この子たち、2人ともケガもあるし、重労働は…」
「え?革、あたし大丈夫っ」
「俺が心配する」

コトハはしょうがないが、巳束自身は平気だと言おうとするが、革によって言うのを止められる。ヒルコは、なら酒場で酌と言ったが それも革によって断固拒否といって止められてしまう。


「スエヒロ!そのクソガキ、黙らせるか海に投げ捨てて。ワタシと口がききたきゃ“花降銀100は出しな”ってさ!」


革の態度に堪忍袋の緒が切れてしまい、無理難題の金額を提示されてしまう。
結局、巳束とコトハの労働場所はスエヒロが織物工房に欠員があるといい、そこで働くことになった。





(銀100ってどのぐらいの額…?)



全てはカネ次第の街

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