民家へと革と一緒に戻ったあたしは、もう少しだけ眠りたいと告げて床に伏せることを選択した。だけど、眠ることができない。
戻ってきたカンナギは、何事もなかったような顔で革とカナテと一緒になって一言二言、話をしてから渋るカナテを外へと連れ出していた。聞く耳を立てていたが、カンナギが先程のことを、口にすることはなかった。


「……巳束?起きてるんだろ」
「うん…‥、ごめん。色々 気になっちゃって」


自分のこともそうだが、問題は革と門脇のことだ。日本に居た門脇が、この天和国に来てしまい何かが起ころうとしている。実際には衝突してしまっているし、すでに起こっていると言ったほうが正しいんだろう。
巳束は、床に座り込む革と視線を合わせるために、上体を起こした。


「俺さ、お前に見せられないって思ったんだ。学校で、門脇とのこと…巳束が休みがちで居なかったとき正直ホッとしていた。見られたくなくて済むと。だから、その後もお前を避けて…心配掛けたくないって」
「革…‥」
「なのに、ごめん!結局は、巳束に心配掛けてた。現に今だって…。俺が“鬼”になるなんて」


一方的な“力”で抑えつけられていた。多勢に無勢、それは門脇を中心に“力”で革を降し続けていた、イジメ――…‥


「絶対に他人(ヒト)には同じことはしないって思ってた。人間、ときには力も必要だって知ってる!味わった人間しか分からない。あの痛みや恐怖や惨めさは…お前は知ろうとしてくれたけどな」
「………っ、」


力ずくで他人を、思い通りに抑えつけたアカチのやり方が許せなかった。それは、最低だと。


「…最初は降伏して言いなりになった人間もいつかは爆発するよ。たとえば、さっきの…俺みたいに―――」


絶対に許せないと思った感情が、俺の中にもあったと革はいう。門脇と同じ、アカチと同じ抑えつけようとする“暴力(チカラ)”。


「もしかしたら、またきっかけで“鬼”になるかもしれない!“創世”で破壊や…人を…、でも、でも!!」


革は抱え込んでいた頭から手を離し、拳に力を入れる。


「俺は、それでも進みたい。そして、今度はお前に…巳束に、側で見ていて貰いたい!」


門脇が天和国に来て劍神を持った以上、逃げる訳にはいかない。だからこそ、巳束に見ていて欲しいと革は告げる。“創世”は人の心を変えて、降すのでなく生命(ミタマ)を預かること――


「革は…‥、革は門脇の“心”を変える?」
「…自信は…まだないけど――」


自分の腕から劍神“創世”を出して、巳束に誓うように告げる。


「やってみる!“鬼”には絶対にならないって約束する!」


あたしが、何者かは何だっていい。分かることは、革に見ていて欲しいと言われたことだ。


「――うん、うん!ちゃんと、側で見てる。側にいるから。革の意志が強いのは、あたしが一番知ってるんだから…‥っ」


流れ出る涙に、思わず顔を俯ければそのまま革に抱きしめられていた。



「…ありがとう、巳束」

「それは、あたしのセリフだよ」





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