“ナグ、ナルは消えてもずっと一緒だよ”
 “だから外へ出て”

創世の光と共にナルも消えていった。今まで、目の前にいたナルがもういない。

「………ナ…ル…、ナルの、バカッ!!」
「ナグ、待って!!」

建物の中へ走っていったナグを追いかけるために、あたしは走り出した。




「ミツカ!?なんで、アイツ」
「アラタ様!あの…」

革の元へカンナギたちが駆け寄ってくる。カナテは革に、妹のナルも劍神で実体化した“絵”であったのかと口した。ナルは死んでいた。ナグはここで本当に独りぼっちだった。

「一度消したら、もうしまいだっつってたさ。だからアイツ“妹の絵”だけは守ろうとして――――お前分かってて!」
「ナルが!ナグのために自分を消すよう望んだんだ!!」

それは、革にも分かっていた。分かっていたからこその、行動だった。
革はそのままカナテの横を通り過ぎようとすれば、カンナギが前に立ち塞がった。

「アラタ。あいつを降すんだろうな?」
「!!」


鞘であるかぎり「大王争い」に必然と巻き込まれてしまう。それは、ナグの意志とは関係なく。革が降さなくても、いずれ誰かに“力ずく”で降されてしまうだろう。
ナグと巳束の後を追いかける革の姿に、カンナギはボソッと呟いた。

「…分かってない、お前は…。本当に甘い男だ」


 * * *


「ナグ、待って、お願いだから」

暴れるナグを後ろから抱きしめるが、ナグはあたしの手を振り解こうと暴れる。暴れた勢いに、ナグは持っていた白堊を手放した。あたしは痛みに、くっと顔を歪ませながらも腕を弱めることはしなかった。
逆に強く、強く抱きしめた。

「いいよ、気の済むまで暴れても……あたしはこの腕を解かないッ!!
 あたしたちは、ナグを置いてかないよっっ!!」

「………うゥあアアああッ――――ッッ!!」


声の聞こえてくる方へと足を進めた。その声に応えてやりたくて。革は自分の手にあった創世を放して巳束の腕の中で声を露わに泣くナグを、前から包み込んだ。

「ナグ、巳束も俺もお前を置いてかないっっ!!」

ナグを抱きかかえれば、安心したのか疲れてしまったのか、ナグの寝息が耳に届く。顔を覗けば、眠ってしまったようだ。

「巳束、ナグの側にいてくれてありがとな」

ボソッと革に告げられた言葉に、あたしは顔を横に振った。あたしは何もしてないよっと。
そこへコトハとカナテがナグをどうするのかと顔を出した。
カンナギが革に、ナグを降すのかっと問い掛けたことをカナテから知った。カナテもカンナギの話に同意だという。ほかの鞘はきっと大王の位を手に入れるためなら、容赦なく降しにかかると。


「アカチのやり方、見たさ…ナグのため思ったらお前がここで―――」


カナテの声に薄っすらとナグは目を開けていたことを、あたしも革も気付きはしなかった。

「…よせそんな話」
「はあ。朝、島の外で待ってるさ!」





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