カナテはコトハのために、崖を越え薬草を探していた。高いところまで来れば、何もない地にぽつんと墓石があることに気付く。

「墓…?こんなとこに…誰のさ?」

その墓石の周りだけ草花が咲いていて、それがカナテが探していた薬草(チヨミクサ)であることに気付く。コトハに喜んでもらえると、崖から周りを見下ろせば炎が上がっていることに驚く。



「…………」
「よし。ヘタな動きをすると一気に殺るぞ」

カンナギは首に回している腕の力を込めながら告げた。革は一瞬の隙を作るため、聞こえないように「顕れたまえ!!」と口にする。
劍神の光の眩しさを利用して、革はカンナギから離れた。


「!!、…っ…」

「火に囲まれている!?」

革は逃げようとするが、カンナギが「逃げ場はないぞ、アラタ」と言うように火に囲まれていることで足が止まってしまう。カンナギは炎を纏わせながら「“創世(ツクヨ)”の光か、殺傷の攻撃力は一切ないようだがな」っと口にする。


「燃えない…!?火の中で平気なのか!?」
「当然だろう、俺の劍神は“火焔”―――火の神、炎は俺を護りはしても、決して傷つけはしない」


炎と同じであること。また“地龍(オコロ)”の鞘 アカチの場合は“地”と同じ。つまり、自然現象も意のまま。
全劍神を統一すればそれこそ最強の「神」―――――

カンナギは、革の持つ“創世”のことを「伝承では天地創造の際、消滅したとあったが……」っと口にする。神意で攻撃しても無効化する、全劍神を生んだ親神(オヤガミ)――――、言わば“無敵の劍神”と。


「アカチに勝つために、腕ずくで頂く!!」


バンっと勢いを突ければ、拳や膝蹴りを革に繰り出していく。革は瞬時に劍神を手の平に戻せば、チッと睨みを利かせるカンナギに「なんとしても、劍神は渡さない!!」と告げて、切れた口元を手で拭う。
セオの告げた、全劍神と鞘を束ねて秘女王の元へ“君が世界を変えるんだ”の言葉を思い出しその使命を果たすまで、誰にも屈してたまるか!!と心に決めていた。


(革っ…)

何も出来ないまま、燃え上がる炎の先にいる革とカンナギを見ていればコトハとカナテの声が聞こえてくる。


「アラタ様――!!」
「アラター!ミツカー!!」

コトハはカナテの肩を借りてはいるが、二人とも焦っているようでカナテが「ミツカ、早くそこ離れろ――――」っと叫ぶ。その声と同時に、ボオッと音を立てるように周りの炎の勢いが増した。それは、逃げ場がない状態だった。

「あつっ!?」

「巳束!?」

巳束の声に革が振り向いた瞬間、カンナギから「どこ見てやがる!!」と蹴りを入れられるが「カンナギ…ッ、この火を止めろ…っ!!」っと口にする。

「あ!?」

「火は意のままなんだろ…ッ、早く!!」
  
「“火焔”があればな。この地は“自然発火”だ、この土地(カグツチ)にはよくある現象。…これまでは俺が劍神で抑えてきたが―――
 でも今は…そう、“昔”と同じ…」


その熱さに、あたしは膝を着いてしまう。カナテは、燃え上がる炎に「くそっ、ミツカ 無事か!!水ねーのか!!」ともがいていた。

「カナテ、あたしはいいから!コトハと一緒に離れて、巻き込まれちゃう!!」

「巳束――!!そんなこと言うな!そっちに行くから―――」

「革!?」

革は燃え上がる炎を突き進んでいた。巳束の元へ、向うために。だが、炎が止むことはない。


「革!いいから、あたしのことは――――いいから!!」
「良くない!!良くないんだって、……お前は俺の―――――」




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