アカチは地面に劍神“地龍”を突き刺したまま、柄に手をやり「劍神“火焔”は頂いた。…待っていたぞ、この瞬間(トキ)を!」っと口にする。
「…“火焔”…」
「もう戦えまい。俺に降れカンナギ!」
(カンナギが負けた…)
カンナギは降ることに対しては何も言わず、ただ奪われたことに動揺をしていていた。告げようとしないカンナギに、アカチは地より剣を突き出し四方を固め刃を向けた。
ザクッと斬りかかったところから血が流れていく。鋭い痛みに「…ッ!!」っと声が漏れれば「安心しろ、死なない程度にしてやる」とアカチが口にする。
「貴様の口から“降る”との『降下の誓言(セイゴン)』を聞くまでな――」
四方から襲いかかる土の剣によってカンナギの腕、脚、身体には傷から血が滲み出ていた。その攻撃は止まない。
「ひどい!!殺すより残酷じゃない――!!」
「アラタ…!」
「………っ」
カンナギは秘女王を裏切った、“大王の位”のために。“アラタ”に罪をかぶせて。天和国に来た、あたしと革に罪を着せた。
「(カンナギ…)」
(革……)
革は劍神を持つ手に力を入れていた。そしてあたしに向かって、コクンっと強く頷いた。きっと考えていることは同じだ。
(あたしには、力がない…けど、革には止める術がある)
カンナギは痛みに顔を歪めるが「しつこい男だ、―――要は口がきければいい」と口にし「腕や足の1、2本いいだろう!!」っと告げる。
「やめろ!!」
革の神意によって、それは吹き飛ばれる。その声に反応して、アカチとカンナギは顔を向けた。
「丸腰の相手にいいかげんにしろ!!」
「神意…?」
「…!!」
「貴様は、たしか“アラタ”…。それは劍神か!」
驚いた顔をしただけで、何も言わないカンナギに「なるほど、貴様はこいつが“鞘”と知っていたのだな」っと理解する。それで“アラタ”を追いかけていたのかと。鞘 “ツツガ”を降した“新しき鞘”か―――。
カンナギの前に、革が入り込めば「それで、俺を降そうというのか?お前も“大王の位”を狙うか、アラタ」っとアカチが言えば、革は唇をかみしめた。
「――――“大王の位”…?」
平和に暮らして人の生活を壊して、なんの罪もない人たちを大勢殺して、これから生まれて来ようとしてた生命(イノチ)を奪った。
「なにが“大王”だッ!!
そんなもん手に入れる価値もねえッ!!」
「フ…世界(クニ)の頂点の位に“価値もない”か」
アカチは鼻で笑えば、クルっと劍神を回し自分の胸元に収め「貴様も“鞘”なら覚えておけ…これからは…」っと告げる。
「“降す”か、“降されるか”だ!!」
「覚悟するんだな」っと告げた瞬間、ガラっと崖錐の岩が崩れかけていた。そのことに「革!危ない!!」っと声をあげれば、カンナギに被さりながら岩崩れを逃れた。しかし、アカチはすでに居なくなっていた。
「アカチ!!…いない!?」
「革、……大丈夫」
岩崩れが治まった直後に革に駆け寄れば「ああ、」っと言う。コトハもカナテもあたしの後に、続いて駆け寄ってくるがホニはカンナギの元に駆け寄った。
カンナギは、膝を着き“火焔”っと口にしていた。ホニはカンナギの肩を掴み「だんな様を…オヒカ様を取り返して!!」っと声をあげた。
「十ニ神鞘なんだろ、強いんだろ!?
ねえ、戻せるよね!!」
それは、ホニの切なる願い。カンナギはホニの目を見ることが出来ない。
「………だ」
「オヒカ様はカンナギ様を尊敬していたんだよ――――」
「無理だ!!一度降されたら…、相手の劍神に取り込まれたら!!
二度と元に戻らない!還ってくることはない!!」
痛いぐらいに叫ぶホニに、カンナギは声をあげた。
「…それに俺は劍神を…“火焔”を奪われた―――、これではアカチと対等に戦うことも…降すこともできん…」
それは弱々しく消えていく声。ホニは“還らない”っということを受け入ることは、出来なかった。「なんでだよ、初めてお子が生まれるって奥様と…」っと繰り返すだけだった。
「…なんで―――ッッ!!」
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