ずっと、思っていた。人を信じることを諦めないで欲しいっと。
それを止めたら、独りぼっちになってしまう。だから、あたしは側にいると決めた。




「ずっと、辛かったよね」

溢れだしそうになる涙を堪えて、革はゴシゴシっと目を擦れば見っとも無いよなっと口にする。
見っとも無くない、その証拠にツツガが安らかな顔をしている。
目を細めるツツガに反応するように、あたしたちが持っていたツツガの劍神が姿を変える。

「え!?姿が変わった!」
「劍神が…!!」

あたしと革が、その変化を口にすれば“…それが劍神「審判(サニワ)」の本来の姿―――”っとツツガが告げる。


“…「アラタ」と「ミツカ」っと言ったな。もっとお前らと早く、逢えていれば…”


「「え?」」

“鞘でありながら私こそが鬼と化し、人の心を喪(ウシナ)った罪人…その劍神にはもう、ふさわしくない…。だがお前「アラタ」なら、きっと正しき「審判」ができるだろう―――”


そう告げれば、ポウっと光を纏いはじめ、手にしていた「審判」が光となり消えてしまう。そしてツツガに、ヒュっと吸い込まれていく。



“――劍神「審判(サニワ)」”
“今、ここに大いなる鞘に降らん。我が生命(ミタマ)、偉大な劍神と共にあれ――”



言葉と共に光が革の劍神の宝玉へと、吸い込まれていく。革は「ツツガ!!今のは!?」と、劍神を手に問えば“これで審判の神意はお前のもの”っと告げた。
体が薄れていくように、ツツガが消え掛けていた。

「ツツガ!?」
「な、何でツツガ!?」


“劍神も私もお前に降った今、役目は済んだ。これからはお前の、その劍神の中で生きよう…”


見せてくれ、鞘よ。新たなる管理者として、このガトヤを元に戻したまえ。秩序ある本来の姿に――――

ツツガの想いを受け取れば、革は「顕れたまえ」っと口にする。
劍神を天に掲げ「審判!!」と声にすれば、その姿を審判へと変えた。審判から無数の光が、ガトヤの建物や周り者たちに伸びていく。
それは、光を失っていたガトヤに降り注いでいくように。そして外で見張っていたカンナギの目にも届いていた。


船に光の攻撃を受けたカンナギは、その怒りにガトヤの入口の橋を渡っていたがゴゴゴゴっと動く外壁に「なんだ、今度はァッ!!」っと声をあげる。


周りの取り囲んでいた外壁が、海に沈むと「静まりたまえ」っと革は口にする。静まったガトヤは、管のない元の姿を取り戻していた。
そして、あたしたちがいる最下層の円台には幾人の人が横たわっている。周りで見ていた者たちが「“審判の刻”でさらわれた奴らじゃねーか!?」っと口にした。



「ミツカ!アラタ!」っと声のする方へと顔を向ければ、オソメさんがあたしと革を一緒に抱きしめる。大切な男(ヒト)が生きていたっと、ありがとうと言って。


「アラタ!大切なもん――」
「分かってる!ありがとう、オソメさん」


見守っていたコトハ、カナテ、ギンチもあたしたちの場所へと駆け寄って来れば、周りの者たちが何かにどよめき始めた。


「革?オソメさんと何を話して?」
「ん、大したことないよ」

「っ…そっか」っと呟けば、周りの者たちの「十二神鞘のカンナギ様が」っという声が届く。


「カンナギがっ!?」
「なんで、またあの男が!?」
「逃げましょ、アラタ様!巳束さん!」

早く逃げなきゃいけないっと口にすれば、カナテが「こっちさ」と口にする。俺らの基地までっと。


“…10階上だ道はもう分かるな。早く行け、アラタとミツカよ”


ツツガの言葉に後押しされるように、あたしたちはガトヤの通路を走ってカナテたちの基地までに戻っていた。


「もし、ここの空間が全部元に戻ったんならさ、たぶん俺らの住んでたとこも―――」

「「あ!!」」


カナテが指差す方には、海に浮かぶ船があったのだ。「これなら、外に出られる」っと口にしあたしたちが、その船に乗り込むのだった。


 * * *


カンナギは最下層に降りれば「アラタはどこだ!?」っと口にする。そして、すでに革や巳束の居なくなった場所で、消えかけるツツガがいることに気付く。


“…十二神鞘のカンナギか…、あの無実の少年と少女になんの用だ”

「お前!?ツツガ!?その姿…まさか、あいつに“降った”のか!?」


「なぜ…」っとカンナギが口にすれば、ツツガはフフッと笑った。お前もいつか分かる。あやつらは強い、あれこそ、この世界を統べる劍神―――っと。





「「外だ―――っっ!!」」


解放感とも言える風に「ん――っ」と手を伸ばし、あたしと革はガトヤの建物を見上げていた。
罪人たちを殺していなかったツツガ。オソメさんたちは無事に出られただろうか。あの人は見ていただろうかっと。


“きっとできる”


「革なら、できるよ」

「お前の言いたいこと、分かってるよ」



そうだ、きっとできる…。ここでなら俺は変われるかもしれない。


「アラタ様も巳束さんも、落ちないでくださいねっ」
「つーかギンチ、これどこ向かってんのさ?」
「さあー」

コトハたちの言葉に「目的地、決まってるよね」っと、隣に立つ革に掛ければ「ああ、秘女王のいる首都(ミヤコ)だ!!」っとミチヒノタマを手に声をあげていた。








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